16715 ノビルと山ウド、山羊の乳    古澤襄

ノビル(野蒜)のことを書いたら各地から反響があった。北は北海道から南は沖縄まで自生しているネギ属の多年草。春になると、あぜ道にうすみどり色の細い葉を伸ばし、根は超小粒のタマネギのような球根。
古代から野草摘みで親しまれ、応神天皇の歌に「いざ子ども 野蒜摘みに 蒜摘みに」とある。(古事記)
「ネギ(葱)」の歴史はよく知らないが、深谷ねぎ(深谷市)、下仁田ネギ(下仁田町)、千住ネギ(千住)など農家が手をかけて市場に出荷しているのに対して、野草のノビルは田畑のあぜ道を探索して摘まねばならない。
戦時中に勤労動員で農家の手伝いをさせられたが、休憩時間に仲間と競争でノビル摘みをしたものだ。葉はネギの代用として食べたが、やはり球根の方が酢味噌をつけて食べると美味しい。強壮・強請剤として重宝された。野草というよりも薬草といった方がいいのかもしれない。
ウド好きの私はみそ汁のウドや酢味噌和えのウドを食べるが、スーパーに並んでいるウドよりも菩提寺に和尚さんが送ってくれる山ウドの方がいい。ウドの渋みがあるからで、スーパーのウドはダイコンのように味がない。
親切な農家はおやつに山羊の乳をふるまってくれた。疎開する前には東京で牛乳を飲んだことがあるが、山羊の乳は独特の臭いがあって飲むのに苦労した。
だが岩手県議の高橋さんが「試しに飲んでみたら」と持ってきてくれた山羊の乳は臭いがない。しぼった乳を冷蔵庫で一晩寝かせると臭いが消えるのだという。牛乳には下痢する体質の人も山羊の乳だと下痢をしない。山羊の乳で作ったヨーグルトも数は少ないが市販されている。
ノビルも山ウドも山羊の乳も簡単には手に入らない。住み良い世の中になったのか、住み難い世の中になったのか、私には分からない。
杜父魚文庫

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