■読売新聞・社説で厳しい論評
党勢の低迷に対する危機感の薄い、甘い総括だった。これでも党首が続投できるところに、党の現状が示されている。
民主党が、海江田代表の党運営を総括する両院議員懇談会を開いた。昨夏の参院選惨敗後、海江田氏が「1年後までの目に見える成果」を約束して代表にとどまった経緯を踏まえたものだ。
海江田氏は懇談会の冒頭、「安倍政権への支持が小さくなっている。国民の不安や不満の受け皿に民主党がなれるかどうかだ」と語り、続投する考えを表明した。
「目に見える成果」としては、党の結束を維持したことなどを挙げた。だが、それらを理由に続投を正当化するのは、やや無理があるのではないか。
海江田氏はこの1年、党再建に意欲は見せてきたが、発信力に乏しく、存在感は薄かった。政党支持率は、自民党が30~40%台なのに対し、民主党は1けた台だ。
消費増税後初の国政選である4月の衆院鹿児島2区補選では、推薦候補が敗れた。先月中旬の滋賀県知事選で前民主党衆院議員が勝利したのも、「民主党隠し」の戦術が奏功した面がある。
民主党内では、岡田克也前副総理らが来年9月の代表選を前倒しするよう公然と求めていたが、海江田氏は拒否し続けた。
自民党の党則には、所属国会議員と都道府県連代表の過半数が求めれば総裁選を行える「リコール規定」がある。だが、民主党の規約にこうした規定はないため、海江田氏が応じない限り、任期途中の代表選はできない。
海江田氏の強気な姿勢の背景には、反執行部系議員が新代表候補などを巡って足並みがそろわず、「海江田おろし」が広がりを欠いているという事情もある。
ただ、民主党の前途は依然として、厳しい。労働組合との関係強化を掲げる海江田執行部と、「労組頼み」脱却を求める保守系議員との対立は根深い。
海江田氏は9月にも党役員を刷新する考えだが、海江田氏に対する批判がくすぶる中、挙党態勢を築くのは簡単ではあるまい。
来春の統一地方選に向けた政策作りも近く本格化する。バラマキ政策が目立つ2009年衆院選政権公約を年内に見直すというが、あまりに作業が遅すぎないか。
集団的自衛権の行使の是非に関しても、議論を棚上げしている。党の亀裂回避を優先し、結論を先送りする体質を変えなければ、野党第1党の責任を果たせず、党勢回復もおぼつかない。(読売)
杜父魚文庫
16730 海江田民主党 甘い総括で再建できるのか 古澤襄

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