■ベトナム戦争以来で初
【カブール】アフガニスタンの首都カブール近郊の陸軍士官学校で5日、同国軍の軍服を着た1人の男が米陸軍の少将を射殺した。アフガニスタンでの10年以上にわたる戦争の犠牲者で最高位の米軍人だ。他の国際治安支援部隊(ISAF)将校ら17人も負傷した。
死亡したのは、ハロルド・J・グリーン陸軍少将。最近ISAFの副司令官として同地に赴任してきたばかりだった。
米国防総省のジョン・カービー報道官によると、男はアフガニスタン人兵士と見られ、その場で射殺された。軍の軍服を着た外部の反政府勢力兵士とは考えられないという。
アフガニスタンの警官や兵士が多国籍軍兵士に発砲する事件は繰り返し起きており同盟諸国間の信頼は揺らいでいる。しかし、5日の事件は、高位の軍人が犠牲者になったという意味でかつてない出来事だ。国防総省当局者は、ベトナム戦争以来、海外の戦闘地域で米軍将官が殺害されたのは初めてとみられると述べた。
カービー報道官は、米軍と北大西洋条約機構(NATO)の将校は、訓練センターへの定期的な巡回に参加しており、そこで発砲事件に遭遇したと述べた。
多国籍軍へのこの種の攻撃件数は2012年にピークに達し、少なくとも多国籍軍兵士61人がアフガニスタン警察や軍の制服を着た人物によって殺害された。このようなgreen-on-blue incidents(味方ないし身内からの攻撃。blueは味方、greenは味方の協力軍、さらにredが敵を意味する)」の事件は、多国籍軍がそのプレゼンスを縮小したため、最近数カ月間は減少していた。
カービー報道官は、このような攻撃は、完全に排除するのは不可能だと述べた。しかし同報道官は、最近ではまれになってきており状況が進展しているあかしだと述べた。
米当局者は、今回の攻撃による、アフガニスタンにおける米国の戦略全体、あるいはアフガニスタン治安部隊に対する米軍の信頼に影響は全くないだろうと述べた。多国籍部隊の現在の軍事ミッションは12月に終了するが、米政府は期限後も限定的な兵力をアフガニスタンに駐留させる。これは次期アフガニスタン大統領が米国との安全保障協定に署名することが条件となっている。
アフガニスタンは6月14日に大統領選挙を実施したが、2人の候補者がいずれも勝利を主張しており、票の数え直しを余儀なくされている。両者とも大統領に就任したら安全保障協定に署名すると誓約している。
5日の襲撃は、アフガニスタン兵士たちが国際的な監視の下で訓練を受けている安全とみられる施設で発生した。多国籍部隊当局者によれば、犯人は自動小銃で武装し、現地時間の正午ごろ、多国籍軍将校とアフガニスタン将校が会見している最中に、発砲した。
多国籍軍将校のほか、施設の司令官を含むアフガニスタン高級将校3人も負傷した。負傷者の中にはドイツ軍の准将も含まれているが、ドイツ軍によれば、生命に危険はないという。(米ウォール・ストリート・ジャーナル)
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