16867 米空爆の効果小さく、オバマ大統領に難問    古澤襄

■軍事介入を拡大するか
【ワシントン】米軍がイラク北部でイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」への空爆を開始してから4日が過ぎた。だが米当局者は11日、空爆がイスラム国に深刻な打撃を与える公算は小さいとの見方を示した。
空爆の効果が小さいことで、オバマ大統領は戦略上の難問を突きつけられている。目的を達成した時点でイラクでの米国の軍事行動を縮小するか、あるいは米国人を攻撃する恐れのある「イスラム国」部隊を打破するために軍事行動を拡大するか、決めなければならない。
すでに米国の軍事介入が拡大に向かう兆しが出ている。米国は新しい戦略に基づき、イラク北部でイスラム国と戦っているクルド人部隊に武器を供与している。このため、長年イラクからの独立を目指しているクルド人が勢いづき、米国はさらに戦闘に巻き込まれる可能性がある。

オバマ大統領は11日、米国の役割は限定的なものと想定していると強調する一方で、米国の関与拡大への道を示した。
米国は「イラクの人道的危機と反テロ問題に対処するために中東諸国と協力する用意がある」とし、イラクで新しい連立政権が樹立されれば、「支援を取り付けやすくなるだろう」と述べた。
今後数週間は、イラクの政治的混乱の結果がオバマ大統領の決断を大きく左右するだろう。イラクのマリキ首相は、退陣して新政権に権力を移譲するよう求める国際的圧力に抵抗している。
■複数の目的が絡む戦略
イラクの政情不安は、軍事関与をクルド人部隊への武器供与に絞るという米国の決断に大きな影響を及ぼした。クルド人部隊はイラク軍より優秀と見なされている。
米国の戦略は、複数の目的が複雑に絡み合ってできている。オバマ政権は、イスラム国部隊がもたらしている危機に立ち向かうと同時に、多くの犠牲者を伴う不人気な戦争を繰り返さずにイラクの分裂を阻止したいと考えている。
しかし、イスラム国への攻撃を強めるよう大統領に求める米政界の圧力は高まっている。
イラクでデービッド・ペトレイアス米陸軍大将の顧問を務めたジョージワシントン大学のスティーブン・ビドル教授は「(イスラム国への攻撃拡大は)終わりの見えない展開につながるリスクが大きい」とし、「攻撃を続けてもイスラム国を排除できないとなれば、ワシントンの多くの人々は強い不満を感じるだろう」と述べた。
米国防総省の当局者によると、イスラム国に対する空爆は、この4日間で少なくとも17回行われた。
民主党と共和党の議員はともに、イスラム国に対するより総合的な戦略の提示を大統領に求めている。
ある民主党議員の側近は、クルド人への武器供与は短期的には有効かもしれないが、「長期的にはイラクの政治的安定の実現を困難にする」と語る。
(米ウォール・ストリート・ジャーナル)
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