【ワシントン】米国政府はシリア国内で活動するイスラム教スンニ派の過激派組織「イスラム国(ISIS)」に対する軍事攻撃を検討していることをこれまでで最も強く示唆している。米国防総省は攻撃対象とする指導者の居所や訓練キャンプの所在地の特定を進めている。
イスラム国が今週、米国人ジャーナリストを殺害したのを受け、ベン・ローズ大統領副補佐官(国家安全保障担当)は22日、「米国人に対する企てがあれば、それがどこから生じたものであっても米国に対する脅威と見なす。われわれはその脅威に対して行動を起こす用意ができている」と述べ、シリア国内でイスラム国の指導者を攻撃する可能性を否定しなかった。
シリアへの空爆は、3年にわたる内戦に米国が直接関与することを意味する。国連の推計によると、シリア内戦による死者はこれまでで約20万人近くに上っている。
米軍関係者はイスラム国の指導者など「価値の高い対象」への攻撃を開始するまでの時間について、「1時間かもしれないし、1週間かもしれない」と述べた。訓練キャンプへの攻撃なら、「すぐに」実施できるという。
シリアへの攻撃はオバマ大統領の大きな方針転換を意味する。大統領はイラク戦争の終結を公約に就任し、中東地域での軍事力の行使に消極的だった。
しかし、米国はイスラム国を封じ込め、打倒するために軍事行動を徐々に拡大させている。イスラム国はイラクとシリアにまたがる地域を支配している。
オバマ大統領は今月初めにイラク国内でのイスラム国に対する空爆を承認、戦闘機や爆撃機、無人攻撃機を使い、90回以上にわたって空爆を実施している。
軍事行動をシリアに拡大することについて、政権外で支持が広がっている。
シリア攻撃を支持しているのはジョージ・W・ブッシュ政権下で駐イラク大使、駐アフガニスタン大使を歴任したザルメイ・カリルザード氏、昨年までアフガニスタンで米軍や多国籍軍を指揮したジョン・アレン氏、オバマ政権で駐イラク大使、駐アフガニスタン大使を務めたライアン・クロッカー氏ら。
大統領はイラク空爆の目的をイラクで任務に就いている米国人の保護とクルド系少数宗派ヤジディ教徒への支援に絞ることで、米軍の関与に歯止めをかけようとしてきた。
空爆によってイスラム国の進撃を鈍らせた米国は他にイスラム国を叩ける場所がないか、検討している。
米政府関係者は米国が限定的に関与し、各国がイスラム国と戦うクルド人部隊に武器を供与すれば、イラクで新政権が成立するまでイスラム国を封じ込めることができるとみていた。
しかし、イスラム国が約2年前にシリアで拉致された米国人フリージャーナリストのジェームズ・フォーリー氏の殺害映像をインターネット上で公開すると、流れが変わった。
フォーリー氏を殺害したイスラム国の戦闘員は米国がイラクで軍事攻撃を続ければ、別の米国人ジャーナリストも殺害すると脅迫した。
この脅迫がオバマ政権をさらに攻撃的な対応に駆り立てた。大統領をはじめとした政権幹部はイスラム国を非難、ジョン・ケリー国務長官はイスラム国を壊滅させるべきだと述べた。
チャック・ヘーゲル国防長官はイスラム国について、2001年の米同時多発テロ以前のアルカイダ以上の脅威との見方を示した。(米ウォール・ストリート・ジャーナル)
杜父魚文庫
16967 米政権、シリアの「イスラム国」攻撃を検討 古澤襄

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