16992 「石破氏の乱」自民党内に強まる批判     古澤襄

■「人事権を侵害」「本当に戦が下手だ」
安倍晋三首相(自民党総裁)が9月3日に行う内閣改造と党役員人事をめぐり、石破茂幹事長の自らの処遇に関する言動に、党内から批判が強まっている。正式要請がない段階で安全保障法制担当相への就任を拒否する意向を示し、幹事長続投の希望をあからさまに語るのは、「人事権者である首相に公然と盾突いたに等しい」(党幹部)ためだ。「石破氏の乱」は、自身を苦しい立場に追い込むことになりそうだ。
「リー・シェンロン首相が『首相によろしく』とのことでした」
26日朝、党本部で開かれた役員会。石破氏は3週間ぶりに対面した首相に、シンガポールで過ごした夏休みの話題をふり、にこやかに語りかけた。首相も穏やかに応じたものの、どこか空々しさが漂った。
石破氏は25日のTBSラジオ番組で、安保担当相には「首相と百パーセント考えが一緒」の人物が適当と語り、幹事長続投の希望を表明。集団的自衛権の行使容認をめぐる公明党との協議については「自分の考えを全部抑えてやってきた」と今更不満をあらわにした。26日の記者会見でも「政府の役職にある者はそう(首相と考えが百パーセント一致)でないと閣内不一致だ」と強調してみせた。
これに対し、菅義偉(よしひで)官房長官は同日の記者会見で「人事は首相の専権事項だ」と3回も繰り返し、不快感を表明。首相周辺は「自分がやりたい役職を指定するのは前代未聞だ」とあきれかえり、脇雅史参院幹事長は「安保政策だけでなく、さまざまな政策で、個人の見解は当然あるが、組織としての意向に従うのは常識だ」と批判した。石破氏の言動を容認していては、党内統治が崩れかねないためだ。
また、高村正彦副総裁は役員会で「どんな役職であっても党として一致団結していくことが重要だ」と強調。細田博之幹事長代行は「人事では不満が出ることもあるが、民主党はそれで失敗した」と対立が先鋭化しないようクギを刺した。
石破氏への理解が広がらないのは、来秋の党総裁選をにらんで首相と距離を置く思惑が透けてみえるからだ。石破氏は「総裁選の準備だ、なんぞというつまらんことは考えていない」と語るが、額面通り受け止める向きは少ない。ある党幹部は石破氏をこう評した。
「石破氏は本当に戦が下手だ。本音をさらけ出したら、もう白旗を上げたに等しい」
(産経)
杜父魚文庫

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