16996 米国「究極の敵」に急浮上したイスラム国    古澤襄

米国の「究極の敵」はイランや北朝鮮、ロシアや中国などを飛び越え「イスラム国」になったと言っていい。それは米人記者のジェームズ・フォーリー氏が残虐な処刑をされた影響だけでない。
「イスラム国」はこれまで対処してきたどのテロリスト集団よりもイデオロギー、戦略や戦術に長けた高度な軍事力、そして資金力がある・・・とヘーゲル国防長官は強調している。
オバマ大統領ら米首脳は一年前までは「イスラム国」をテロリスト集団の”二軍”とみなして対応策を講じてこなかったという。それがいまでは空爆ぐらいの対応策では、壊滅させることができないマンモス・テロリスト集団に急成長している。
いまや「イスラム国」は米国にとって「究極の敵」となったわけである。
<(26日 ロイター)米国防総省で21日に行われた記者会見で、ヘーゲル国防長官は、イスラム教スンニ派の過激派組織「イスラム国」について次のように語った。
「テロリスト集団の域を超え、イデオロギーと、戦略や戦術に長けた高度な軍事力、そして資金力がある。これまで目にしてきたどの組織とも違う。われわれは万全を期さなければならない」
故にイスラム国は、イランや北朝鮮、ロシアや中国などを飛び越え、米国の敵リスト「ナンバーワン」に浮上していると。
この会見の数日前、イスラム国は米国人記者のジェームズ・フォーリー氏の処刑映像を公開し、それを見た者には屈辱を与え、見ない者には恐怖を植え付けた。
筆者は、ヘーゲル長官がふらちな政治目的のためにイスラム国の脅威を故意に喧伝したと非難しているわけではない。危機が起きているときに居眠りしていた国家安全保障当局者として標準的な反応を示したまでだ。
イスラム国の台頭は間違いなく危機の一部であるにもかかわらず、ヘーゲル氏もオバマ大統領も約1年前までイスラム国を「二軍」とみなし、対応策を講じてこなかった。したがって、彼らが今、恐怖をあおり立てたいと考えてもおかしくはないだろう。
一方、メディアはイスラム国を報道するにあたり、パニックを起こしてはいない。
英フィナンシャル・タイムズ紙は25日付の記事のなかで、イスラム国は国際武装組織アルカイダのように中央集権化されておらず、付加的な脅威と表現。米戦略国際問>」題研究所(CSIS)のアンソニー・コーデスマン氏は、組織内の権力は分散されており、メンバーが自由奔放に指導力を発揮することを可能にしていると指摘している。
もしイスラム国が旧ソ連のように中央集権化されていたら、メディアは反対に恐怖を声高に広め、一枚岩である同組織によって引き起こされる現実の脅威について報道し続けるだろう。
また、ブルッキングス研究所ドーハセンターのグレゴリー・ゴース上級研究員も冷静にイスラム国を分析している。
ゴース氏はイスラム国が「新たな中東での冷戦」の受益者だとし、同地域の各国指導者が国境での支配力を失い、自国民にサービス(そして保護)を提供できないことを露呈し、共通の政治的主体性の構築に失敗するなか、イスラム国が台頭したとの見方を示している。
だが、こうしたイスラム国の台頭は、シリア政府とイラク政府のぜい弱さを示したとはいえ、必ずしもそれが同組織の強さと恐ろしさを意味するわけではない。その残虐性にもかかわらず、イスラム国には地域的な同調者も、支持を表明する大国や後援者もいない。イスラム国の収入源は盗みや見かじめ料にほぼ限られている。
同組織がこれまでに得た最高のスキルは、米国とイランのように互いに相いれなかった国々を団結させることにある。完全な一致とまではいかなくても、似たような利害を持つ国々を団結させるこの才能によって、イスラム国が「自滅」することは可能だと、ゴース氏はみている。(ロイター・コラム)>
  
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