ここにきて政局ものはスポーツ紙の方が面白い。一般紙は安倍VS石破と囃し立てたが、党内孤立を怖れた石破氏があっさり白旗を掲げたので、書くことがなくなった。九月人事も安倍首相のガードが固いので、憶測記事をポロポロ書いて辻褄を合わせている程度。
安倍のガードも固いが、女房役の菅官房長官も「人事は総理が決めることです」と取り付くしまがない。その点スポーツ紙のほうは自由奔放に政局記事を書きまくっている。
傑作だったのは日刊スポーツの見出し「仮面和解」。仮面夫婦とは聞いたことがあるが、仮面和解とは言い得て妙である。記事の末尾に<石破氏と首相との関係は、元来良くない。「仮面和解」は、石破氏の敗北を意味するのか。>とキッチリ追い討ちをかけている。中山知子記者には「見出し賞」をあげたい。
それにしても九月改造であっと驚くサプライズ人事は出そうもない。読売は党四役を改めて党三役体制に戻すのが首相の意向だと伝えた。ということは小渕優子元少子化担当相の選対委員長はないことになる。
選挙実務に長けた河村建夫氏と華がある小渕優子さんのコンビで沖縄県知事選などを乗り切るつもりかと、岡目八目で予想していたが、安倍首相はもっとシビアにみている。
八月最後の日曜日がくるが、九月人事の骨格は首相の胸のうちにある。
■自民党の石破茂幹事長は29日、官邸で安倍晋三首相と会談した後、来月3日の内閣改造&党役員人事について、「組織人としてトップの決定に従うのは当然だ」と述べ、首相の入閣要請があれば受ける考えを示した。幹事長続投でなければ、安全保障法制担当相を含め打診は断る構えが「石破の乱」の出陣前、矛を収めた。
昼食を挟み、1時間20分の会談。石破氏は「より緊密に連携しようと話した。これから先も私は首相を全力で支える」と、和解を強調。ポスト打診の有無、幹事長続投を伝えたかなどの質問には、「3日まで一切言わない」と貝になった。
石破氏は25日のラジオ番組で、首相の入閣要請を受けない意向を明言。人事権は首相側にあり、批判が強まった。幹事長を外されれば事実上の更迭として、石破氏周辺では入閣固辞→無役となり、来秋の党総裁選を視野に地方を回り、支持拡大を目指す計画もあったが、現状では党内での孤立は確実。「亀裂の火種を自らつくった。受けざるを得ないと判断した」(関係者)。
首相は、石破氏の幹事長の調整力を疑問視していただけに、今回の対応に激怒したとされる。ただ石破氏を無役にすれば、支持率が低下した際、自身の足元を揺るがす恐れもある。菅義偉官房長官らの進言もあり、石破氏との対立回避に動き、結果的に目的通りの「閣内封じ」に成功した。
会談では安保相を重ねて打診。石破氏は辞退と幹事長続投を伝えた。首相は地方にこだわる石破氏に、新設の地方創生担当相を軸に打診するとみられる。
双方が保身と妥協を選んだ、今回の和解。石破氏は会談後、鹿児島に飛んだが、来秋の総裁選出馬に消極的な姿勢もにじませた。「信頼関係は揺らがない」とする首相との関係は、元来良くない。「仮面和解」は、石破氏の敗北を意味するのか。【中山知子】
◆25日の石破氏発言 TBSラジオの番組で、内閣改造の話題に言及。「首相と考えが100%一緒の人が国会で答弁するのが、一番いい」と発言した。先月24日に打診された安全保障法制担当相は国会答弁の担当だが、集団的自衛権をめぐる両者の考えは異なるため、打診辞退の意向と受け止められた。公の場の言及は初めてだった。自分が答弁に立てば野党に追及されるとして、「国会が止まる」とも述べた。
◆首相VS石破氏の歴史 石破氏は86年衆院選で、当時全国最年少の29歳で初当選し、93年初当選の首相より、当選回数で2回上回る。防衛相や農相などの閣僚を歴任したが、首相は官房長官以外の経験がないまま、首相に上り詰めた。2人の「対立」が表面化したのは、第1次安倍政権の07年8月。参院選で惨敗し、党代議士会で退陣要求を受けた首相を、石破氏は「何をどう反省するのか」と批判した。首相が勝利した12年の党総裁選では、第1回投票で石破氏が首相の倍近い地方票を獲得したが、国会議員による決選投票で首相が上回った。(日刊スポーツ)
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