安倍首相が3日行った内閣改造・自民党役員人事では、第2次内閣発足時と同様、派閥均衡にこだわらない“一本釣り”を中心とした人選を貫いた。
その結果、派閥ごとの明暗が大きく分かれ、党内では評価と不満が交錯した。
「今回の人事は大変申し訳ありませんでした。次はまた希望を言ってください」
首相は3日、党本部で自らの出身派閥の町村派幹部を呼び止め、こう声をかけた。党内最大の92人を擁する町村派からは、下村文部科学相、松島法相、山谷国家公安委員長の3人が入閣したが、町村信孝会長が首相に要望していた4人のベテラン議員は入閣を果たせなかった。町村派内からは「人事のことを言っても仕方がないが、派閥としては不満だ」との声もあがる。
第2次内閣発足時に4人入閣した岸田派(44人)は、今回の改造では会長の岸田外相と事務総長の望月環境相の2人にとどまった。前日夜の会合では「入閣は岸田会長だけとなるのでは」との観測も流れ、重苦しい雰囲気が漂った。それでも、同派の「待機組」の一人だった望月氏が入閣したことで、岸田派中堅は「何とか体面を保つことができた」と安堵(あんど)する。
小規模派閥では、領袖と首相との距離が、明暗を分けた。石原派(15人)からの入閣はゼロとなる一方、大島派(13人)からは江渡防衛相と有村女性活躍相の2人が入閣した。
大島派の前身の派閥の会長は高村正彦副総裁で、首相の悲願である集団的自衛権の行使をめぐる憲法解釈見直しの与党協議の責任者を務めた。別の派閥幹部は「首相は高村氏に恩義を感じており、大島派の要望を聞いたのだろう」と推察する。首相は当初、党の復興政策の責任者である大島理森会長を復興相に充てることを検討していたが、大島氏は派閥議員の入閣を優先するよう求めたとされる。
これに対し、石原派は、石原伸晃会長が環境相時代の失言なども影響し、首相から冷遇されたとの見方も出ている。石原派中堅は「小派閥だから仕方がないが、何でうちだけゼロなのか」と恨み節を漏らした。(読売)
杜父魚文庫
17063 「一本釣り」で派閥に明暗、評価・不満が交錯 古澤襄

コメント