■「第2のスノーデン」目指していた
米国人マシュー・ミラー氏(25)は、北朝鮮に対する人権プロパガンダをでっち上げるために米政府が送り込んだスパイだった――。少なくとも北朝鮮の国営メディアはこう断じている。国営メディアは20日、当初は北朝鮮への亡命を求めたといわれていたミラー氏が実際は北朝鮮のことを嫌っており、囚人になることで同国に潜入し、人権侵害の訴えを起こすつもりだったと報じた。
そうすることで、ミラー氏は「世界で最も有名な男」かつ「第2のスノーデン」になろうとしていたと北朝鮮は主張している。
北朝鮮の説明は、先週行われたミラー氏の裁判で傍聴を許された海外メディアの報道とも一致している。この裁判で、ミラー氏は労働教化6年の刑を言い渡された。
ミラー氏は4月に平壌に到着した際、観光ビザ(査証)を破いたため逮捕された。ミラー氏はそれ以来、釈放を要求しているが、北朝鮮への入国目的については詳しいことを明らかにしていない。
このため、北朝鮮はミラー氏の動機について、自分たちの話を作り上げてきた。
約1200ワードに及ぶ北朝鮮の説明によると、ミラー氏の行為は「単純な理解不足や精神疾患が理由ではなく」、北朝鮮の人権に関わる記録を暴露するために、米国政府によって同氏が送り込まれたことが理由だという。
ミラー氏は北朝鮮で拘束されてから2年近くになる米国人ケネス・ベ氏と会い、ベ氏の解放を勝ち取り、刑務所を出た後はベ氏と一緒に人権活動家になるのが望みだったと、朝鮮中央通信社(KCNA)は報じた。
KCNAによると、ミラー氏はその目的のために、韓国の米軍基地に関する文書を自身のタブレット端末「iPad(アイパッド)」と携帯音楽プレーヤー「iPod(アイポッド)に保存していると主張したという。
真実がどうあれ、北朝鮮の説明には、ミラー氏の拘束に国内向けのプロパガンダを展開する価値を見いだしていることを示す印があふれている。国営メディアの報道はミラー氏について、長年続く米国による北朝鮮の主権侵害の単なる最新例であり、ミラー氏の逮捕は北朝鮮の抵抗の成功例だと表現している。
また北朝鮮の説明には、ミラー氏についてこれまで知られていなかった情報も含まれている。例えば、ミラー氏が大学を中退し、韓国のソウルで無職のまま暮らす間に、北朝鮮に対し「根深い敵意」を抱くようになったというものだ。また、KCNAの報道によると、同氏は裁判の非公開を望んだという。ただ、これらの情報は裏付けがとれていない。(米ウォール・ストリート・ジャーナル)
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