■「イスラム国」の司令部や製油施設など破壊
【ベイルート】米国と有志国連合によるシリアへの24日夜からの空爆で、「イスラム国」が所有するとされる簡易製油施設や家屋が破壊され、少なくとも21人が死亡した。シリアの反政府グループ「シリア人権監視団」が25日、明らかにした。
一方、同国のアサド大統領は、国内各地でこうした反政府グループの制圧に向けた攻撃を継続している。
シリア人権監視団は、同国各地の戦闘を監視している。同グループによると、米国などが空爆したのは東部のデリゾール県のアル・マヤディーン近郊の「イスラム国」司令部や訓練キャンプ、製油所の施設など。
イラクとの国境沿いに位置するデリゾールで他に空爆の標的となったのは、「イスラム国」の戦闘員の拠点、車2台、検問所だという。同グループはまた、ハサカ県にある3つの簡易製油施設も攻撃されたと発表した。
死亡した21人の内訳は「イスラム国」のメンバー14人、女性1人と2人の子供を含む一般市民7人だったという。
一方、米国防総省は24日、米軍戦闘機とアラブ有志国の戦闘機がシリアの東部、北東部にある12の小規模な製油施設を空爆したと発表した。
プレハブで輸送が簡単なこれらの製油施設で精製された原油の闇市場での売上金は、「イスラム国」の軍事攻撃の資金やイラクとシリアの移動のための資金になっているという。
シリアの「イスラム国」に対する空爆が3日目となるなか、シリア政府は既に3年を超える反政府グループへの制圧作戦を継続した。
シリア政府は、「イスラム国」と国際テロ組織アルカイダにつながるもう1つの「ヌスラ戦線」を政府の敵と認定する一方、両グループに対する米国と有志国の軍事作戦を歓迎している。
アサド大統領は全ての反政府勢力を「テロリスト」と呼んでいるが、25日には国内での米国などによる空爆開始を念頭に、こうしたテロリストと戦ういかなる国際的努力を歓迎すると述べた。
また、シリア人権監視団は25日、シリア軍がヌスラ戦線や他の反政府勢力を首都ダマスカスの北東部にあるアドラ・アル・ウマリヤの町から掃討したと明らかにした。反政府勢力は昨年遅くに同町を占拠し、イスラム・シーア派の分派の1つでアサド体制の上層部を占めるアラウィ派の大量虐殺を行ったとされている。
シリア国営テレビは同町の奪還を大きな勝利だと称賛し、掃討作戦は継続されるとした。
ただ、ヌスラ戦線などに打撃を与えたこのシリア政府軍の進撃は、米国主導の「イスラム国」への空爆が必死で権力にしがみついているアサド大統領を結果的に支援している、との疑念を反アサド陣営内であおる危険性を持っている。
ダマスカス周辺に大きな勢力を有する最大の反政府組織「イスラム戦線」は、米国主導の軍事作戦はシリア国民に一段と苦しませ、同勢力と共闘しているヌスラ戦線などを標的にしているとして強く反発している。(米ウォール・ストリート・ジャーナル)
杜父魚文庫
17304 シリアへの米空爆とアサドの反政府攻撃 古澤襄

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