【ニューヨーク時事】週末10日のニューヨーク株式相場は、ハイテク企業による業績見通しの下方修正をきっかけに企業決算への警戒感が広がって続落、ダウ工業株30種平均は前日終値比115.15ドル安の1万6544.10ドルと、約2カ月ぶり安値を更新して終了した。また、ハイテク株中心のナスダック総合指数は2%を超える急落となり、102.10ポイント安の4276.24と、約4カ月ぶり安値で終わった。
半導体関連のマイクロチップ・テクノロジーとネットワーク機器大手ジュニパー・ネットワークスは共に7~9月期の売上高について、従来予想から下方修正した。これを受けて、これから本格化する企業決算発表への警戒感が広がり、半導体などハイテク株を中心に売られた。(時事)
■中国の景気減速、米連邦準備制度理事会(FRB)悩ます可能性も
米国のインフレ動向をめぐっては、中国の景気減速が下押し圧力をもたらしており、今後もこうした影響が強まる公算は大きい。
最近では市場予想を下回る経済指標が相次いだことから、中国の成長率予想を見直す動きが出ている。先週には世界銀行が中国の国内総生産(GDP)成長率見通しを、今年は7.6%から7.4%、2015年は7.5%から7.2%へとそれぞれ下方修正した。さらに低い民間予想も多い。
中国の景気鈍化は米連邦準備制度理事会(FRB)をいら立たせるような価格下落の前触れになる可能性もある。FRBのインフレ指標はすでに目標である2%を割り込んでいる上、経済には停滞感が強く、リセッション(景気後退)に陥ればデフレに至るリスクも高まる。
中国の減速はここ数カ月間で商品価格が下落した大きな理由になっている。
アルミニウムなど中国からの原材料は、最近までは内需に吸収されていたものが現在は輸出へと回っており、国際価格を押し下げている。長年にわたる中国のエネルギー需要の増加はシェール開発など新たな石油資源の開発へとつながったほか、先進国における燃料消費効率の向上をけん引した。しかし、中国の景気が鈍化した現在、過剰供給の懸念もあって原油価格は急落している。
特に原油価格の下げはガソリン価格を通じて今後何カ月かにわたって消費者物価を押し下げる。また、製造費や輸送費の減少につれて価格上昇を抑える力は他の物品へと広がる見込みだ。
さらに、中国の減速がインフレを継続的に押し下げる要因は米国が輸入する中国製品の価格となる可能性もある。
中国製品の価格には低下の兆しが見られる。米労働省は10日、中国輸入価格指数は9月に前月比0.1%低下し、前年同月比では0.1%上昇したと発表した。中国が急激な景気減速を回避するために輸出を進めれば、米国の輸入価格は一段と弱含む可能性もある。
中国は目標GDP成長率を7.5%前後としているが、政権指導部は来年の成長がこれを若干下回ることを許容する方針だ。社会情勢の不安定化を免れるために、指導部は過度な減速を回避するよう万全を期するだろう。
中国の低インフレは自律的成長をけん引するには消費需要が不十分であることを示しており、中国は経済の伸びを保つために輸出に頼る可能性がある。しかし、輸出主導の成長は過去ほど容易に成し遂げられない見込みだ。
中国は2000年代に輸出国としての存在感を大幅に高めた。米国の輸入製造品、機械・輸送機器に占める中国の比率は1999年の10.4%から2009年には29.2%に上昇した。しかし、その後の輸入は頭打ちとなり、昨年には同比率が28.8%に低下した。
この一因は金融危機にある。また、2011年の東日本大震災や津波、タイの洪水などの災害を受けて長いサプライチェーンの体制を見直す企業も増えた。また賃金上昇によって中国における人件費面のメリットは薄れた。さらに衣服からパソコンまで多くの品目で中国製輸入品は飽和点に近づきつつあるが、残る品目は参入がはるかに難しいものだ。
これは米国や他国での中国製輸入品のシェアに上昇余地がないことを意味するものではない。しかし、これを達成するには価格値下げが必要になることも考えられる。FRBが2%インフレという目標を達成する時期は一段と遠のく様相を示している。(米ウォール・ストリート・ジャーナル)
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