■今週 イタリア・ミラノで首脳会談
【キエフ(ウクライナ)】ロシアとウクライナ両国の大統領は今週、イタリア・ミラノで会談するが、これを前に両国は12日、ウクライナ東部での緊張緩和に向けた措置を取った。
ロシア政府報道官はモスクワで、プーチン大統領がウクライナ国境沿いに集結している数千の部隊の撤収を命令したと発表した。キエフではポロシェンコ大統領が、今週16、17の両日ミラノで開かれるアジア欧州会議(ASEM)首脳会議の場でプーチン大統領と会うことを明らかにするとともに、この話し合いは難しいものになるとの見通しを示した。
領土問題での両国間の溝は依然深いが、両国とも少なくとも一時的停戦を期待する理由がある。ウクライナでは26日に最高会議(議会)の選挙があり、また、同国は今冬のガス供給も心配しなければならない。一方でロシアは、和平努力を強めていることを示せば、米国と欧州による経済制裁が緩和されるのではないかと期待している。
石油価格の下落はロシア経済にも打撃となっていることから、この制裁はロシアにとって特に大きな懸念材料だ。同国通貨ルーブルは先週、ロシア国民がドルを買い、同国企業も制裁で更新できない融資を返済するためにドル購入を強いられているのを背景に下落している。
両国は9月、ベラルーシのミンスクで停戦協定に調印したが、その後も多くの人が戦闘で死亡している。両国とも戦場で戦闘員を完全にはコントロールできていない。また、ポロシェンコ、プーチンの両氏は西側諸国の首脳を満足させるために融和的であるように見せたいところだが、双方とも自国内では戦闘を続けるようナショナリストから圧力を受けている。
ポロシェンコ大統領は11日、ウクライナ東部の町Ilovaiskで同国政府軍が惨敗を喫したことなどで多くの批判を浴びていたヘレテイ国防相を解任した。この町では、政府軍が親ロシア派武装勢力に取り囲まれ、これを突破しようとした際に政府軍の数百人が殺された。
同大統領は12日、「軍のトップが交代する時期だ」と述べただけで、具体的な解任理由は明らかにしなかった。大統領は、13日に国防相候補者を議会に提案するとしている。
ウクライナは、政府軍が8月にロシア軍の攻撃を受け敗走したあと、親ロ派と停戦協定を結んだ。しかし、ウクライナは、親ロ派は事実上の国家としている東部の領土拡大ができると見て攻撃を続けていると批判した。
ポロシェンコ大統領は12日、自分のサイトで、数日中に完全停戦を達成できると期待しており、親ロ派が支配している数百キロメートルの国境を奪還すると書いた。この国境線はロシアからの補給にとって重要な所だ。
同大統領は、欧州が提供する無人機が当面、境界のコントロールに役立つだろうと述べ、新しい、実質的な境界が親ロ派の領土を明確にすることを認めるように見えた。
大統領によると、塹壕、掩ぺい壕、戦車、地対空ミサイル、道路バリケードなどから成る三つの防衛要塞(ようさい)ラインが作られるという。大統領は、自分の和平計画を批判する「主戦論者」を攻撃し、「彼らには現実性がない」と述べた。
ウクライナの通信社報道によると、大統領は、プーチン大統領との交渉は困難なものになるとの見通しを示し、親ロ派を抑えられることを示すのはプーチン氏の役目だと語った。
北大西洋条約機構(NATO)は、ロシアが今年夏、親ロ派を支援するために数千の戦闘員と数百両の戦車や装甲車をウクライナに送り込んだとしている。
これに対してロシアは親ロ派を支援することも部隊をウクライナに送り込むこともしていないと否定。ただ、一部の兵士が休暇中にウクライナに入って戦っていることはあるかもしれないとしている。NATOによると、停戦協定が調印されたあと、ロシアは多くの兵士をウクライナから撤退させたという。
当局者によると、戦闘での死傷者は増えているが、双方とも重火器の使用を少なくしているため、停戦は若干の改善をもたらしているという。
親ロ派は11日に戦闘停止を発表した。だが、デバルツェボ、Shchastyaの二つの町やドネツク空港周辺では戦闘が続き、住民の犠牲者も出た。親ロ派が支配するドネツク市では11日に4人が死亡し、11人が負傷したという。(米ウォール・ストリート・ジャーナル)
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