17454 「ISILの胴元はカタール、UAE,サウジ、そしてトルコだ」と    宮崎正弘

■バイデン副大統領が講演でうっかりの失言。すぐに謝罪したが・・・。
失言癖のあるバイデン副大統領。10月2日にハーバード大学の講演で、「ISILの資金源はカタール、UAE、サウジアラビア、そしてトルコである。ただし個人名で献金されている」と言った。
これはブルッキングス報告書に記載されていたため、原稿を棒読みしたようだが、ただちにトルコが抗議し、10月4日、バイデンはトルコのエルドアン大統領に電話して謝罪した。
事件はこれで納まらなかった。
7日に発売されたパネッタ元国防長官の回想録で、オバマ政権のイラク政策はなっていない。撤兵は時期尚早で、当時ペンタゴンは「いま多少の米兵を残留させないと、イラクはアルカィーダが跳梁跋扈してアフガニスタンの二の舞になる」と反対していたが、まったく聞き入れなかった。
ゲーツ前国防長官も回想録でオバマをこき下ろし、ヒラリー前国務長官も、オバマ政策を批判した。なんのことはない。オバマ第一期政権を囲んだホワイトハウスの幹部が、みな、オバマ大統領を無能として、突き放しているのだ。
実際にISILにはサウジ、カタール、UAEから「個人」の名前で巨額の寄付があり、武器購入の軍資金となっている。
ほかにもISILは誘拐身代金や恐喝、婦女子誘拐のうえ性奴隷として輸出していると言われ、イラクから石油を密輸して豊富な軍資金に恵まれ、外人部隊をリクルートしてきた。
米軍のイラク、シリア空爆にもかかわらず、テロリストらは一般民衆を巻き添えにするため、住宅地に潜り込んでいるので、効果的空爆はできない。
 
 ▼「ホラサン」、「アル・ナスラ・フロント」等の過激派組織と合従連衡の可能性
14日発売の『TIME』(14年10月20日号)に拠れば、シリアに陣取る過激派の「ホラサン」の拠点にも空爆したが「効果が挙げられず、FBI長官のジム・コメイは、まもなく彼らの報復テロが米国と同盟国内で開始されるだろう」と悲観的なコメントを寄せている。
「ホラサン」は謎の組織で構成員はアフガン、トルクメニスタン、イランからのメンバーが占め、アルカィーダの幹部だったザワヒリが、密かに部下のモハシン・アル・ファダリをシリアに派遣して細胞を組織させたという位しかCIAも把握していない。
モハシン・アル・ファダリは軍資金集めにも秀でており、最初、かれはシリアにあった「アル・ナスラ・フロント」という過激派の組織に潜り込んだ。アルカィーダ並びにISILと連絡があったようだ。
「シリアのアルカィーダ」がその後、分裂し、ISILに合流したグループとアル・ナスラ・フロントに加わった組があるという。
ともあれ、米軍と有志連合には湾岸産油国も加わっているが、後者がどこまで本気なのか、正体がつかめないうえ、途中から有志連合に加わった筈のトルコも、武器と兵隊のシリアへの密輸ルートの壊滅には消極的である。
他方、イスラムの脅威に対して「移民反対」などナショナリスティクな排外主義が横溢するフランス、イギリスでは、ムスリムに対する「ヘイト・クライム」がISILの跳梁に比例して急増している。
杜父魚文庫

コメント

  1. S. より:

    ちょうど「宮崎正弘」論客の著書を集中的に読んでいるところです。
    中国問題の専門家、中東問題も読みごたえあります。
    強みは多くを現地、自ら歩いて取材。レアな情報分析楽しみにしています。

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