■予測の半分から20% 大赤字の放漫経営と稀有壮大な計画のコスト度外視の結末は?
中国石油天然気集団(ペトロチャイナは、その子会社)は中国最大の国営メジャーである。世界中に石油、ガスの鉱区を買収し、その破天荒な投資は天文学的金額となる。
そして豪に於ける石炭鉱区経営の破綻に見られるように、思いつきの剛毅な投資は良いが、まるでコスト対効果を勘案しない、いや大風呂敷を広げることの好きな中国人らしいプロジェクトだった。
数字がでた。ガスの輸入に関しては、鳴り物入りのプロジェクトが二つある。
第一は遠くトルクメニスタンからえんえんとウズベキスタン、カザフスタンの砂漠を横切り、新彊ウィグル自治区からパイプラインを合流させて上海へ運ぶ総延長6173キロに及ぶ「西油東輸」といわれる世紀のプロジェクトだ。
トルクメニスタンはガス埋蔵が7兆3000億立方メートルといわれ、従来はロシア向けだったが、中国が割り込み、2006年から稼働している。
トルクメニスタン国内188キロ、ウズベキスタン領内通過が525キロ、カザフスタンが1293キロと総延長2006キロでようやく新彊ウィグル自治区へ達する。
ここから上海まで分岐するラインと、廣西省南寧までのパイプラインは、じつに4167キロ。
第二はミャンマー沖合から南北銃弾する793キロのガスパイプラインで、雲南省へ運ぶ。さらに雲南省から貴州を経て廣西省へパイプラインは延びるので、総延長は2520キロである。
後者ミャンマーからのプロジェクトの現状を見てみよう。
2013年7月に、このパイプラインは完成し、ガス輸送が開始された。中国は過去一年間で18億7000万立方メーターのガスを輸入し、6000万立方メーターを、「通過料」をしてミャンマーに供給した。
これは輸送能力全量のわずか20%でしかないことが判明した(アジアタイムズ、10月14日)。
中国の公式統計では2013年に4億900万立方を輸入したが、輸入価格は一立方あたり2・68元だった。雲南省での売価は3・36元から4・7元。輸送費に@3元かかる。つまり大赤字である。
▼まもなく「大風呂敷」のツケがまわってくる。
中央アジアはどうか。2013年と2014年上半期の18ヶ月間の統計で、415億立方メーターのガスを輸入し、360億元を支払った。
トルクメニスタンのガス輸送のキャパは550億立方と言われる。2013年通年で276億立方(415÷18x12)だから、半分しか輸入していないことになる。
コストを度外視しての、国家の威信をかけてのエネルギー政策は、ガス輸送パイプラインでも逆ざや、赤字分は国家が補填するほかに手はない。
かの風力発電がそうだった。
雨後の竹の子のように、たちまち中国全土に40万基の設置は国が後押しして、WTOに堂々と違反して、補助金を付けたからブームとなったが、実は3分の一が送電線に繋がっていなかった。笑い話にもならない。
太陽光パネルも盛んに奨励され、メーカーが乱立した。
しかしこれもWTO違反の補助金があり、諸外国からの抗議で補助金打ち切りとなり、パネルメーカーの倒産が相次いだ。日本でも太陽光パネル発電による電力会社の購入コストは原発に比べて遙かに割高、採算に合わないことが分かっている。
大風呂敷のツケがまわってくる。
杜父魚文庫
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