17566 政権内でにわかに強まる「年内解散論」    古澤襄

■消費税先送りで一気に反転攻勢も
安倍晋三政権内に、年内に衆院解散・総選挙を断行すべきだとの声が出てきた。9月の内閣改造の目玉だった女性閣僚が一度に2人も辞任し、民主党などの野党は「政治とカネ」の追及に明け暮れている。しかし、報道機関の内閣支持率は急落していないことから、来年10月の消費税率の10%への引き上げを先送りし、「経済再生」を争点に掲げて一気に反転攻勢に出るというシナリオが浮上しているのだ。
 「各社の傾向はばらばらだ」
菅(すが)義(よし)偉(ひで)官房長官は27日の記者会見で、テレビ東京と合同実施した日本経済新聞と、朝日新聞が27日付朝刊で報じた世論調査結果の感想について、余裕の表情で答えた。内閣支持率は、24~26日実施の日経・テレ東が48%と5ポイント低下し、25、26両日に調査した朝日は49%で3ポイント上昇した。
首都圏500人を対象に行ったフジテレビ「新報道2001」の直近の調査も、内閣支持率は55・2%。政党別の支持率でも自民党が37・0%なのに対し民主党は5・0%にとどまり、「国会審議を進めるべきだ」との回答は72・6%だった。
この結果に、政府高官は「国民は審議を望んでいる」とし、世論は野党の国会でのスキャンダル追及にうんざりしているとの見方を示した。
一方、消費税の再引き上げに関し、公明党の山口那津男代表は再引き上げを先送りした場合について「『アベノミクス』がうまくいかなくなったから、引き上げないという判断をしたとの烙(らく)印(いん)を押される」との懸念を示している。首相が再引き上げを先送りすれば、民主党は「アベノミクスは失敗した」と攻撃しそうだ。
それでも、与党内には再引き上げを先送りすべきだとの声が強まっている。
安倍首相は、11月17日に発表される7~9月期の国内総生産(GDP)速報値や12月8日に発表されるGDP改定値を見て判断する方針だが、明るい材料に乏しいのが現状だ。首相は27日の自民党役員会で「物価上昇や国民生活、経済動向を注視していかなければならない」と述べた。
今月22日には、消費税再増税の1年半先送りを唱える自民党の山本幸三衆院議員が勉強会「アベノミクスを成功させる会」を発足させた。山本氏は菅氏と連携して動いているとされ、ある同党中堅は「再増税先送りを決断した上で衆院を電撃解散し『経済を再生させたい』と訴えれば、衆院選に勝てるのではないか」と語る。
民主党の海江田万里代表は27日の記者会見で、首相が衆院解散を断行する可能性について「おやりになるならおやりください」と述べ、受けて立つ姿勢をみせた。政権内に「政治とカネ」の問題が続出している今が好機との判断があるようだが、与党側は野党の選挙協力態勢が整っていないこともあり、海江田氏の発言は「空威張りだ」(自民党中堅)と冷ややかにみている。
解散を躊(ちゅう)躇(ちょ)させる要因もないわけではない。
自民党の勢力が現在の294から減らし、公明党と合わせた獲得議席は、衆院での再議決や憲法改正の発議に必要な3分の2以上が困難になる可能性が高い。一票の格差をめぐり「違憲状態」解消に向け、衆院選挙制度調査会で議論している真っ最中という事情もある。
 「内閣改造をするほど首相の権力は下がり、解散をするほど上がる」
佐藤栄作元首相のこの言葉を、安倍首相も知っているはずだ。(産経)
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