[北京 22日 ロイター]第3・四半期の中国の経済成長率は前年同期比7.3%に鈍化したが、中国の政策当局に近い関係筋によると、中国人民銀行は利下げを見合わせる可能性が大きい。金融政策の本格的な緩和に踏み込めば、政府が改革への取り組みをトーンダウンさせたと受け止められかねないからだ。
景気減速が鮮明になるにつれ、利下げ圧力は高まる一方だ。しかし関係筋によると、利下げすれば債務・不動産バブルが過熱する恐れがあるほか、政府の改革の真剣さに対して疑念が生じるとの懸念が人民銀行内部にあり、迅速な行動に出ることができないでいる。
中国の指導者は、厳しい改革の実行を宣言している手前、人民銀行が利下げや広範囲の預金準備率引き下げなど本格的な政策緩和を行えば、改革後退の兆候と見られるのではないか、と警戒している。
中国政府は2008─09年の世界的な金融危機を受けて、4兆元(約6500億ドル)の大型景気対策を実施。景気押し上げに効果はあったが、現在でも債務膨張という副作用に苦しめられており、「刺激策」はいわば禁句になっている。習近平国家主席は、中国はより持続的な経済成長を目指すべきという「ニューノーマル(新常態)」論を展開している。
国務院発展研究センター(DRC)のシニアエコノミストは、匿名を条件に「利下げは今や極めてセンシティブな政策決定となっている。これは最後の手段であり、安易に使うことはできない」と話す。
<通年成長率、15年ぶりに目標未達の公算>
第3・四半期の中国の経済成長率7.3%は、2009年初頭以来の低水準。通年の成長率は目標の7.5%を下回り、1990年以来の低成長になる公算が大きくなっている。目標未達ならば15年ぶりだ。
政府系の有力シンクタンク、中国社会科学院のシニアエコノミスト、尹中立氏は「個人的には、利下げは必要だと考えている。しかし政府の上層部は、目先の利下げはないことを示唆している」と指摘する。
人民銀はこれまで、小規模行を対象とした預金準備率引き下げや、一部銀行への短期資金注入など、「的を絞った」政策緩和は実施してきた。
中国国際経済交流センター(CCIEE、北京)のエコノミスト、王軍氏は「人民銀行は多くの短期流動性供給ツールを生み出してきたが、その能力はもう枯渇したのではないか」とみている。
<習主席「新常態」で利下げ消える>
関係筋によると、人民銀行と中国国家発展改革委員会(NDRC)では今年、金融緩和を行うべきかどうか、活発な議論が展開されていた。
しかし、夏ごろから流れが変わった。習近平主席が「新常態」を支持、改革を通じて成長をけん引する方針を強く打ち出したからだ。
市場では、人民銀は限定的な政策緩和にとどめ、年内の利下げ可能性はないとの見方が大勢となりつつある。光大証券のチーフエコノミスト、徐高氏は「利下げではなく、何かひっそりと措置をとるのでは」との見方を示した。(ロイター)
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