■財務の緊縮が「新常態」に
(北京/上海 16日 ロイター) 経済が減速するなか、中国企業の投資が細っている。今年通年の投資額は昨年と比べて約7%落ち込む見通しで、世界的な金融危機以降では最大の減少となりそうだ。
投資主導型成長からの脱却を目指す中国経済は、不動産市場の低迷と相まって困難な局面を迎えている。
トムソン・ロイター・スターマインのデータによると、医薬や機械メーカーなど中国企業335社の今年の投資総額は、前年から740億元(121億ドル)、率にして7.3%減少する見通しだ。
企業やアナリストらへの聞き取り調査では、景気の不透明感や、政府の過剰設備産業縮小キャンペーンなどにより、来年も投資は減少する可能性がある。
スズ生産で世界最大手の雲南錫業000960.SZは中国景気の軟化で業績が打撃を受けており、アナリストの予想平均では、今年の同社の投資は81%減少する見込み。多くの企業にとって「倹約」が生き残りのカギとなっている。
雲南錫業の潘文皓・董事会秘書は「われわれは景気の悪化が続くと感じており、そのために支出に目を光らせるほうがいい」と話す。同社は昨年、12億7000万元の純損失を計上した。
景気回復が見通せない中、化学製品メーカーの安徽金禾実業002597.SZは3月に公表した年次報告書の中で、「経済環境は一段と複雑化しそうだ」と指摘し、今年から無期限で生産能力拡大に向けた投資を凍結する方針を示した。
投資を絞る一方で、ロイターの調べによると、今年上半期における726社のキャッシュバランスは前年同期比で13%増えた。投資よりも手持ちの現金を増やす「安全への逃避」が起きていることを示しているといえそうだ。
中国では、投資は長年にわたって経済成長の主要な原動力となっており、昨年の国内総生産(GDP)における寄与率は54%。投資総額43兆7000億元(7兆1000億ドル)のうち、民間投資は63%を占めた。
ロイターのエコノミスト調査では、1─9月の固定資産投資は前年比16.2%増で、約13年ぶりの低水準が予想される。
投資減速が投資偏重型成長からの脱却を目指す政府の意向に伴う良い側面なのかどうかははっきりしないが、確実なのは投資規模が通常大きいエネルギー企業や機械メーカーが投資抑制を主導しているということだ。
ロイターのデータによると、中国石油天然ガス「ペトロチャイナ」は今年の投資額を前年に比べ約110億元減らすとみられている。投資を減らすのは株式を上場した2000年以来で初めてだ。同様に、石炭会社の「中煤能源」も今年、投資を75億元減らすとみられる。
中国の購買担当者景気指数(PMI)に携わる中国物流購買連合会(CFLP)の蔡進・副会長は「伝統的な製造業に関し、投資が引き続き縮小することを懸念している」と指摘。「構造改革のために、それほど多くの石炭や鉄鉱石、鉄鋼は必要なくなっている」と述べた。
30年間の急成長に伴い、環境破壊や政府・企業の債務拡大といった問題を抱える中国にとって構造改革は必要不可欠であり、短期的に成長減速は避けられない。アナリストらは今年の中国の経済成長率を7.4%と、24年ぶりの低い伸びを見込んでいる。
その結果、企業は一段と緊縮姿勢を強めている。中国の鉄鋼メーカー最大手である河北鉄鋼000709.SZは既に、今年は新規プロジェクトに手を付けないとしたほか、政府の措置を受け、2017年まで予算を抑制すると表明した。
同社は半期決算の中で「キャッシュマネジメントはわれわれの重点だ」と指摘。「需給環境と業界の利益低迷を背景に、財務の緊縮が業界の『新常態(ニューノーマル)』となった」と指摘した。(ロイター)
杜父魚文庫
17628 急激に冷え込む中国企業の投資 古澤襄

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