安倍首相が、消費増税を先送りする場合、年内に衆院解散・総選挙に踏み切る検討を始めた。
内閣支持率は、2閣僚の辞任後も一定程度あるため、首相は「勝算はある」(自民党幹部)と考えている。選挙で勝利すれば、予定通りの増税を求める与党内の勢力を封じ込めることも出来る――という判断だ。ただ、増税先送りは、国債の「信認問題」につながる可能性があり、危険なカケでもある。
「年内の衆院解散は大いにあり得る。年が明けると、4月の統一地方選が近づいてくるので、厳しい」
首相周辺は8日、衆院解散のタイミングについてこう解説した。首相は7日のBSフジの番組で「解散について首相に聞けば『考えていない』と言うのが決まりだ」とけむに巻いた。しかし、菅官房長官らと与党にとって最良の衆院解散時期を探ってきた。
衆院解散の時期についてはこれまで、年内解散の他に、〈1〉来年1月の通常国会冒頭〈2〉安全保障法制を整備した上で、来夏に解散〈3〉首相が来年9月の自民党総裁選で勝利し、余勢を駆って秋に解散〈4〉2016年の衆参ダブル選挙――などが候補としてあった。
しかし、通常国会冒頭では、4月の統一地方選に近く、地方議員が運動しにくい。夏の解散は、「安保法制という国民受けのしない政策の後では、厳しい」(自民党幹部)との見方もあった。ダブル選は、公明党が回避したい意向だ。年内解散の場合、「12月16日公示・28日投票」とする案もある。
法相と経済産業相のダブル辞任後、読売新聞社の10月24~25日の緊急全国世論調査では、内閣支持率は前回調査よりも落ちたとはいえ、53%を維持した。自民党内では「野党の選挙協力が整う前に解散した方がいい」との声が強まっていた。菅長官も、早期解散で勝利し、政権を立て直して来年の安保法制の整備などにつなげることを首相に進言していた。(読売)
■枝野氏「選挙に備える」 自民内の早期解散論で
民主党の枝野幸男幹事長は9日、消費税再増税に絡んで自民党内にある早期の衆院解散論に関し「いつ解散されてもいいよう備えるべきだ。解散に追い込めば、(前回)落選して再起を目指す仲間の期待に応えられる」と強調した。青森市で記者団に語った。
同時に「消費税率を上げないとすれば、アベノミクスがうまくいっていないことの裏返しだ」と述べ、安倍晋三首相の経済政策が衆院選の争点になると指摘した。党会合での講演では、衆院選の選挙協力に向けた議論を進める考えを示した。
維新の党の江田憲司共同代表はフジテレビ番組で、再増税が先送りされた時は衆院解散・総選挙が必要だと主張した。「これまでの方針の大転換だから、国民に信を問うべきだ」と述べた。
民主党の渡辺周元防衛副大臣は同番組で、民主党や維新の党、みんなの党などが次期衆院選での「野党連合」構築に向け、政策を擦り合わせるべきだとの認識を示した。(産経)
■永田町:解散風ざわつく 想定3シナリオ
今後の政治日程と「早期解散」シナリオ
年末年始の衆院解散・総選挙をめぐる臆測で永田町がざわめいている。安倍晋三首相は7日、BSフジ番組で「解散について首相に聞けば『考えていない』というのが決まりなんです。実際に考えていない」とけむに巻いたが、解散に踏み切るとしたら、どんな可能性があるのか。シナリオを探った。【影山哲也】
◇ケース(1)増税先送り月内
政府・与党内でささやかれる最も早い解散・総選挙のシナリオが「11月中の解散、12月21日投開票」を軸とした日程だ。背景には、首相が年内に消費税再増税の是非を決めるという、重い選択を迫られている事情がある。
首相は9日から北京に出発し、一連の国際会議から帰国する17日には、消費税率10%への引き上げの判断材料となる7〜9月期国内総生産(GDP)の速報値が発表される。速報値が市場の予測を大幅に下回った場合、予定通りの消費税率引き上げは難しくなる。
首相がこの数字を踏まえ引き上げの延期を決めれば、景気の足を引っ張る要因は小さくできるが、消費増税で社会保障財源の確保を目指した2012年夏の民主、自民、公明の3党合意はほごになる。
11月解散説が浮上するのは、景気回復を優先させたことへの信任を得ることが大義名分になるとの見方があるためだ。
◇ケース(2)年またぎ総選挙
年内に衆院を解散、総選挙は年明け−−というシナリオも可能性はある。
菅義偉官房長官は12月8日のGDP改定値発表を待ったうえで首相が判断すると説明してきた。各種の経済統計が出そろったうえで消費増税の是非を判断し、解散に踏み切る場合、解散は年内になるものの、選挙は年明けにずれ込む。与党は、デフレからの脱却を確実にするための経済政策を掲げる選挙となりそうだ。選挙時期はケース(1)より遅くなるが、4月の統一地方選までまだ時間もあり、自民、公明両党とも厚い地方組織を活用しやすい。
11月30日に今国会は閉会するため、会期の延長がない場合、解散するため短期の臨時国会を再び開く必要が出てくる。
◇ケース(3)1月補正成立後
解散と総選挙が年末年始をまたぐケースは近年例がなく、正月をはさんだ選挙運動は世論の批判を浴びかねない。このため、より有力なのは通常国会を召集したうえでの「1月解散」だ。(毎日)
■衆議院の解散巡って発言相次ぐ
安倍総理大臣は、衆議院の解散・総選挙について、9日、「全く考えていない」と改めて述べました。
ただ、衆議院議員の任期が、来月で折り返しの2年を迎えるなか、与党内では安倍総理大臣の消費税率引き上げの判断しだいでは、解散時期が早まるという臆測も出ていて、9日も閣僚や野党幹部から発言が相次ぎました。
石破地方創生担当大臣は、鹿児島市で講演し、「来月で衆議院議員の任期4年のうち半分が過ぎる。これは、いつ解散があってもおかしくないということだ。解散は総理大臣の専権事項であり、総理大臣が『解散しよう』という判断をしたときに、『準備が整っていません』とか、『今の時期にやると負けてしまいます』などと言って、判断を間違えさせるようなことがあってはならない」と述べました。
また、甘利経済再生担当大臣は、訪問先の中国・北京で、記者団が「安倍総理大臣は、消費税率の引き上げを先送りする場合、衆議院を解散して国民の信を問う方針を固めたという一部報道もあるが、その可能性はあるか」と質問したのに対し、「聞いていない。そういう話は初耳だ」と述べました。
一方、民主党の枝野幹事長は、青森市内で記者団に対し、安倍総理大臣が消費税率の引き上げを先送りして衆議院の解散・総選挙に踏み切れば、いわゆるアベノミクスの失敗が選挙の争点になるとして、選挙準備を進める考えを示しました。
枝野幹事長は、消費税率の10%への引き上げについて、「合わせて社会保障の充実と国会議員の定数削減をしっかり進めていくことがなければ、国民にお願いできない」と述べました。
そのうえで、衆議院の解散・総選挙に関連して、「どのような大義名分でいつ解散するかは安倍総理大臣の判断だが、消費税率を引き上げないとすれば、景気を考慮してのことで、アベノミクスがうまくいっていないことの裏返しとなる。その場合、選挙はアベノミクスの失敗が争点になる。いつ解散されてもいいように、こちらとしては備えておくべきだと思っている」と述べ、選挙準備を進める考えを示しました。
さらに、維新の党の江田共同代表は民放の番組で「国会議員の定数削減という身を切る改革もやっておらず、国民に負担を求める状況ではない。消費税率の10%への引き上げは明確に反対だ。解散・総選挙については、後半国会に向けて、『野党を揺さぶろう』という陽動作戦だとは思うが、仮に消費増税を先送りするなら、これまでの方針の大転換であり、しっかり国民の信を問うべきだ」と述べました。(NHK)
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