■消費再増税は1年半延期
安倍晋三首相は、月内に衆院を解散し、12月中に総選挙を断行する意向を固めた。また平成27年10月の消費税率10%への再引き上げについて1年半後の29年4月に延期する方針を決めた。複数の政府・与党関係者が11日、明らかにした。
17日に公表される7~9月期の国内総生産(GDP)速報値の数値が悪いとみられているため、景気動向の下振れを回避し、政権が最重要課題に掲げるデフレ脱却と経済再生を優先させる。29年4月まで延期すると現衆院議員の任期(28年12月)を超えることから、延期判断について国民の審判を仰ぐ必要があると判断した。
首相は衆院選で再増税の判断のほか、積極的平和主義を掲げて展開してきた「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」についても国民に信を問う考え。また、安倍政権が重要課題に位置づける地方創生の理念を示した「まち・ひと・しごと創生法案」など関連2法案を今国会で成立させ、選挙戦に臨みたい意向だ。
衆院選の時期については「12月9日公示-21日投開票」を軸に調整する。首相は11日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議出席のため訪問中の北京で記者会見し、「解散のタイミングは何ら決めていない。私自身は解散について言及したことは一度もない」と述べた。一連の外遊日程を終えて帰国する17日にも公明党の山口那津男代表らと会談し、選挙日程について協議する。
山口氏は解散を打診された場合、受け入れる見通しで、すでに公明党幹部に選挙準備を指示。党幹部は同党の支持母体・創価学会側に「準備を進めてほしい」と要請しており、学会側は各ブロック責任者を集めた11日の緊急会議で態勢を整えることを確認した。
一方、消費税率の再引き上げの判断をめぐっては、10月末の日銀による追加金融緩和以降、好調に推移している日経平均株価の水準を背景に、政府与党内に再増税論が広がったが、円安による輸入価格の上昇で中小企業の業績や個人消費を圧迫しているとも指摘されている。
このまま再増税に踏み切れば消費マインドをさらに冷え込ませ、結果として税収増につながらない可能性がある。首相は、政権の経済政策「アベノミクス」の波及効果をしぼませ、地方経済の再生にも逆行しかねないと判断した。(産経)
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