17727 ISIL(イスラム国)が独自の通貨を発行へ    宮崎正弘

■世界のどの国からも承認されていないテロリスト「国家」が?
通貨発行は主権国家の経済主権に属する。人口わずか40万人のブルネイも、70万人しかいないブータンも、主権国家であるがゆえに独自通貨を発行する。しかしブルネイはシンガポールドルと連動し、ブータン通貨はインド・ルピーに連動する、脆弱な通貨である。
ISIL(イスラム国)はイラク北部の拠点と拠点を線のようにつなぐ点線地帯を支配しているが、いったいだれが統治者なのか、内閣もなければ行政府も存在しない。カリフを自称する謎の指導者アルバクル・アル・バグダディが軍組織を指導し、シリア空軍から奪取した戦闘機も保有している。
11月13日付け英紙『ファイナンシャル・タイムズ』は、このISILが独自通貨を発行する準備に入ったと伝えている。
情報筋に拠れば、ISIL通貨は、金、銀、銅のコモディティ価格に連動し、最高額は5ディナール(ディナールはイラクなどの通貨単位)で21・25グラムの21カラットの金でつくられる。
米ドル換算で694ドルに相当し、補助コインは銀製コイン。米ドル換算で12セントから4ドル50セントの範囲で幾種類かが鋳造されるという(金価格は現在1オンス=1150ドル前後だから、21・25グラムの金貨なら826ドルに値するはずだが、21カラットのため、純金とは見なされないからだ)。
ステーブ・ハンケ教授(ジョン・ホプキンス大学)は「通貨構想によれば金銀銅価格に連動する理論貨とはいえ、彼らはいったい、その原材料である金や銅をどこから調達するつもりなのか」と根本的な疑問を投げかけた。
杜父魚文庫

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