■安倍首相に打撃
【東京】16日実施された沖縄県知事選挙で、米軍基地を沖縄県内に移設するとの日米両国の計画に強く反対している候補者が当選した。台頭する中国に対抗するための日米両国の地域安全保障戦略を複雑にする動きだ。
当選したのは、前那覇市長の翁長雄志氏(64)で、現職で推進派の仲井真弘多氏(75)を破った。翁長氏は選挙運動で、街の中心部にある米海兵隊の普天間飛行場を人口のそれほど密集していない沖縄北部の沿岸部に移転する計画に反対する姿勢を示した。沖縄県は長年、経済を米軍に依存してきたが、観光業も盛んで、県民たちは以前よりも自信を持って米軍基地のプレゼンスに挑むようになっている。
翁長氏が勝利したことは、尖閣諸島をめぐり中国との領有権問題を争っている中で米国との防衛関係を強化したい日本の努力に後退になる可能性がある。それはまた安倍晋三首相にとって新たな政治的な頭痛の種になる。同首相率いる与党自民党は現職の仲井真氏を推薦していた。
これは安倍首相にとって最近では2度目の県知事選敗北だ。今月10日にNHKテレビが発表した世論調査結果では、安倍内閣の全国支持率は前月から8%ポイント低下して44%になった。閣僚のスキャンダルと、今春の消費増税後の経済の軟調に対する有権者の懸念が足を引っ張った。
就任後2年になる安倍首相は、12月半ばの総選挙を今週決断すると予想されている。有権者による新たな負託を得るための総選挙だ。
普天間基地を人口の密集した宜野湾市から、名護市辺野古に移転する計画は長年足踏み状態が続いている。翁長氏の勝利を受けて、辺野古移転計画を日本政府が予定通り遂行できるかどうかへの懸念が一段と強まった。
翁長氏は当選確実になったのを受け、辺野古基地建設を阻止するため、あらゆることをすると述べ、「普天間基地の県外・国外移設(の公約)をしっかり実行していく」と語った。
普天間基地は長年、日本政府と米国政府間の棘(とげ)のような問題になっている。地元の住民は基地に関係した騒音と航空機事故に苦情を言い、基地を閉鎖するか、あるいは沖縄県以外への移転を求めてきた。1995年に米兵3人が12歳の沖縄の少女を暴行したのをきっかけに、広範な基地反対運動が展開されたのを受けて、米国は96年、普天間飛行場の移転に同意した。
日米両国政府は、普天間飛行場を人口の密集していない地域に移設すれば、米海兵隊の沖縄駐留に対する地元の反対を和らげられると期待して、移設計画を作成した。しかし同計画は、新たな基地建設予定となった辺野古の住民の反対で20年近くにわたって遅延した。安倍氏は2012年、首相に就任した時、長年の停滞を打破すると約束した。実際、16日の知事選投票までは状況が進展しているかにみえた。
翁長氏は、普天間基地を閉鎖し、移設もさせないとし、普天間基地の米海兵隊に沖縄から撤収するよう求めている。「(普天間は)県外、国外移設」が同氏の選挙スローガンだった。
現職の仲井真氏は昨年12月、辺野古沿岸の埋め立て工事を承認した。それまでの工事反対公約を翻した承認だった。
米政府は当時、仲井真知事の承認を称賛した。ヘーゲル国防長官は、仲井真氏の承認は「作戦上抵抗力があり、政治的に持続可能な兵力をこの地域で堅持する(国防総省の)能力を支えるだろう」と述べた。
元通産官僚の仲井真氏は、沖縄県知事として2期務めた。しかし同氏の埋め立て工事承認は、東京(日本政府)に屈したとの非難を地元で浴びるきっかけとなった。
日本が第2次世界大戦に敗北して以降、沖縄は、日本に駐留する米軍の4分の3を擁し、国のアジア太平洋戦略の要だった。しかし沖縄県民は同県に集中した米軍の駐留を批判し米軍のプレゼンスを減らすよう求めてきた。
最近のウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューで、翁長氏は当選したら埋め立て計画に関する文書を厳しく見直し、法的問題があれば承認取り消しを目指すと述べた。 ただ、計画を明確に白紙撤回するとは述べていない。これは基地反対派の批判を呼ぶ一方、基地容認派に希望を与えてきた。
翁長氏は、辺野古への移設は、沖縄への観光客が増えているときに、周辺の海の観光振興に重大な悪影響を及ぼすと述べていた。
同県によると、米軍は1972年には沖縄経済の15.5%に貢献していたが、現在、その比率は5%にまで低下している。(米ウォール・ストリート・ジャーナル)
杜父魚文庫
17743 沖縄県知事に米基地反対派の翁長氏 古澤襄

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