17794 出馬か否か…橋下氏をだまらせた〝温度差〟    古澤襄

■「野党再編の中心」期待も陰る求心力
衆院選を間近に控え、出馬が取り沙汰される維新の党共同代表、橋下徹氏(大阪市長)の存在がクローズアップされている。突然の解散で準備不足が露呈した野党からは「野党再編の中心人物になる」と注目されるが、大阪ではかつての勢いをなくし、看板施策の大阪都構想も崖っぷちで地方議員の間では慰留を求める声が強い。その“温度差”に橋下氏も「賛否両論あるが、自分の基準で決める」と多くを語らなくなった。
■公明への恨み「やり返す」
今月12日、橋下氏は自身と幹事長の松井一郎氏(大阪府知事)の出馬をにおわせた。理由として繰り返したのは野党再編ではなく、公明党への恨みだった。
「やられたらやり返す。納得できませんから」
前身の日本維新の会が勢いに乗っていた前回衆院選。大阪市と大阪府の役所機能を再編する都構想の実現に向けて公明から協力の約束を取り付け、公明候補がいた大阪の4選挙区、兵庫の2選挙区で候補者擁立を見送った。
その後、制度設計の進め方をめぐり決裂。維新単独で過半数を持たない市議会、府議会で実行力を失い、10月には都構想議案が公明など野党の反対多数で廃案となった。
「このままでは人生を終われない」。維新として6選挙区で公明から議員バッジを奪うと宣言した。
■「『橋下選挙』になる」
「橋下氏、出馬も」。そのニュースに永田町はざわついた。衆院選に立つことになる維新の前職は解散前、与野党の議員から「本当に出るのか」と質問攻めにあった。
「橋下代表の話題でもちきり。今回の選挙に国民は冷めているはずだから、橋下代表が出馬すれば『橋下選挙』になる」。維新の前職は期待を膨らませる。
別の前職は「代表は以前から『首長と国会議員の兼職を可能にすべきだ』と言っており、国政進出の思いはあった。今回は自分でタイミングを作ろうとしているのかもしれない」と分析する。
生活の党幹部は「橋下氏が国政に来れば野党再編の中心になる」と歓迎。橋下氏に近い民主党の前原誠司元外相らが今月19日に海江田万里代表に維新との新党結成を求めたとされるのも、橋下氏の国政進出を見越した行動とみられる。
再び国政で存在感を増してきた橋下氏。だが視線を大阪の地方政治に移せば、違った心象風景も見えてくる。標的にされている公明府本部の幹部は「相当追い詰められているのだろうね」と余裕をみせた。
■屈辱的な敗北
開票率0%で相手陣営に「当選確実」。大阪での選挙で圧倒的ともいえる力を誇ってきた橋下維新は昨年9月の堺市長選で、屈辱的な敗北を味わった。
都構想に堺市が加わるかを争点に、現職の竹山修身(おさみ)氏に対抗馬を擁立。橋下氏は公務の合間をぬっては選挙カーに乗ったが、聴衆の輪は往時ほど広がらなかった。昨年5月の慰安婦発言や参院選での伸び悩みを経て、大阪でも橋下氏の求心力は衰えていた。
都構想実現を確実にするには来春の府議選、大阪市議選で過半数を握る必要があるが、「失速した現状ではかなり厳しい」(維新市議)。こうした中、力ずくで公明に協力を迫る出馬カードが切り出された。
だが3月に出直し市長選を強行し、任期約1年を残しての辞職は「放り出し」批判のリスクをはらみ、既に維新の地方議員は支持者の突き上げをくらう。松井氏も現状を連立方程式にたとえ、「難しい。悩みに悩んでいる」と漏らす。
「最後は自分の判断を信じるしかない。決めたときに理由は話すが、記者会見を開くような、たいそうな話ではない」。橋下氏は20日、記者団の質問にそっけなかった。(産経)
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