■企業再生バンカーが手ぐすね
[ニューヨーク 26日 ロイター]石油価格が急落して一部の米エネルギー企業が苦境に追い込まれているため、来年は企業再生案件が増えると見て、バンカーらが手ぐすねを引いている。
エネルギー企業は金融危機後、安価なマネーを利用して米国のレバレッジドローン市場や高利回り債市場で多額の資金を調達し、シェールオイルや沖合油田の開発に投じてきた。
トムソン・ロイターLPCとフィッチ・レーティングスのデータによると、米エネルギー企業向けレバレッジドローンの残高は10月末時点で722億ドル、高利回り債の発行残高は2250億ドルとなっている。これらは5年前に比べて約3倍の規模だ。
エネルギー企業は米レバレッジドローン市場の10%、高利回り債市場の17%を占める。
しかし原油価格の下落でキャッシュフローと流動性が減り、エネルギー企業にとって債券資本市場での借り入れコストは上昇した。
まだ債務再編を迫られるほどの問題にはなっていないが、長期的には債務管理に打撃が及びかねない。
フーリハン・ローキーズで石油・ガス開発生産を統括するJP・ハンソン氏は「これまで健全だった企業が、石油価格の下落によりすぐに債務再編に追い込まれることはないだろう。しかし石油価格に依存し、かつ資本市場での資金調達やM&A(企業合併・買収)を待っているような企業には影響が及びそうだ」と言う。
<資金調達コストが上昇>
石油価格の下落により、エネルギー企業が資本市場で起債する際のコストは上昇した。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチによると、エネルギー企業が発行した高利回り債のクレジットスプレッドは現在、米国債に対して552ベーシスポイント(bp)と、6月以来200bp以上も上昇した。
ヒューストンの石油・天然ガス開発企業エンデバー・インターナショナル(ENDRQ.PK: 株価, 企業情報, レポート)は多額の債務を抱えて資金繰りに窮し、掘削にも遅れが生じて10月に米連邦破産法11条の適用を申請した。
資金調達を求めるエネルギー企業について、企業再生バンカーらは債務再編が必要になる前にまず、資産売却やストラクチャードファイナンスなど複数のオプションがあると見ている。
工場を閉めたり納入企業とコスト削減を交渉できる製造業と異なり、エネルギー企業はひとたび資本が開発プロジェクトに投じられると、営業経費を柔軟に削ることができない。
石油市場の回復を待つだけではこの局面を乗り切れないエネルギー企業もあり、経験豊かな企業再生専門家は既に顧客への助言に乗り出している。しかし開発プロジェクトがどの段階にあるかにより、金融的なアドバイスは異なってくる。
ブラックストーンの企業再生グループのグローバルヘッド、ティム・コールマン氏は「重債務を抱えたエネルギー企業への助言では、すべての企業に当てはまる単一の解決策は存在しない。開発の段階が多岐にわたるからだ」と述べた。(ロイター)
杜父魚文庫
17848 原油安で苦境の米エネルギー企業 古澤襄

コメント