17853 「グローバリズムVSナショナリズム」の図式には疑問    古澤襄

12月総選挙の争点は「小泉構造改革から顕在化し、安倍政権の看板になったアベノミクス」の本質ともいえる”グローバリズム”の是非なのであろう。
だが野党はアベノミクス批判はするが、グローバリズムの是非については曖昧である。つまりは批判が経済政策どまりであって、グローバリズムという自由貿易および市場主義経済を全地球上に拡大させる思想に対して一致した批判精神が欠落している。
強いていうならグローバリズムの是正について一貫して発言してきたのは次世代の党(党首 平沼赳夫)だけではないか。平沼は小泉構造改革を批判者として自民党を離党し復党をしていない。もっとも次世代は平沼がどちらかといえば保守左派なのに対して党員には強烈なナショナリズム色が濃い層もかなりいる。
「グローバリズムVSナショナリズム」という対比図式は一種の宿命なのかもしれないが、一国ナショナリズムに拘ると世界の潮流ととなったグローバリズムから取り残され国際経済の”孤児”になりかねない。
野党がアベノミクス批判どまりで、グローバリズム批判に踏み込めないのは、ナショナリズムに近寄る危険性を感じているのかもしれない。だから自衛隊の強化策は戦前の軍国主義に通じるという旧社会党の古びた批判を持ち出してお茶を濁す域を出ないでいる。中国が東支那海や南支那海で軍事的な覇道を押し進めている現状を肌で感じている国民には古びた軍国主義復活論では説得性に乏しい。
むしろグローバリズムの欠陥を正し、日本型の新しい成長戦略を構築する好機が12月総選挙の争点ではないか。安倍は明らかにそれを意識している。それにしては民主党はじめ野党の政策提言がないに等しいのが寂しい。あるのはアベノミクスに批判的な財務省官僚の考え方を鸚鵡返しに言っているに過ぎない。
批判のための批判では新しい成長戦略の糧にはならない。むしろ縮小経済の傾向を助長するだけである。
グローバリズム(英: globalism)とは、地球上を一つの共同体とみなし、世界の一体化(グローバリゼーション)を進める思想である。現代では、多国籍企業が国境を越えて地球規模で経済活動を展開している。
しかし多国籍企業による市場の寡占や独占は原油など資源価格の固定化を招き、資金・資本に乏しい国家からの企業の参入は極端に不利となっている。自由であるべき経済活動が市場から参入を拒否され、富める者ははますます豊かになり、貧しき者は一層貧しくなる不公平が世界に広がりをみせている。
これを是正するには、一国ナショナリズムでは対応できない。むしろアジア経済圏を構築し、世界のブロック経済化が進めるしか道がないだろう。これもヨーロッパのユーロ経済圏という先進的な試みがあるが、ユーロも成功したといえない。ウクライナ情勢の緊迫化によって経済圏よりも軍事的なNATOの強化に目を向けている。
アジア経済圏も中国が軍事的な覇道の道に力を注いでいる現状では展望が開けない。しかしグローバリズムを放置すれば、世界で持たざる者の抵抗が激化するのは避けられず、テロが頻発するであろう。
グローバリズムを中東で押し進めようとした新保守主義・ネオコンサバティズムは、アフガン戦争、イラク戦争で失敗した。力でグローバリズムを世界に広げ、地球主義を達成するのは不可能といっていい。
それでもこの思想は、アメリカ国内で豊富な資金を得て、シンクタンクや雑誌,研究機関によって支持されている。オバマ外交の拙劣さによっても、ネオコンが復活する”悪夢”はあり得ないとは思うが、それだけにヒラリー・クリントンがどのような世界戦略を明らかにするか、そこに注目している。
杜父魚文庫

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