17867 台湾統一地方選挙で国民党が惨敗したが    宮崎正弘

■すでに次の運動は2016年、総統選挙へ移行
11月29日に投開票が行われた台湾の統一地方選挙で、中国国民党は歴史的な大敗を喫し、江宜樺・行政院長(首相に相当)が引責辞任した。
6つの直轄市で中国国民党候補が勝ったのは新北市のみ。それも民進党候補に約2万4千票差に迫られる接戦だった。この直轄市6市を含む22の県・市で、中国国民党は15席から6席となり、民進党が6席から13席に倍増、無所属も1席から3席に増えた。
中央選挙委員会によると、投票率は67.59%、有権者数は1851万1356人。29日夜11時25分にすべての開票作業が終わった。
今回選挙の最大の特徴は台北市に現れている。組織に頼らない無所属の柯文哲候補が24万票もの大差をつけ、中国国民党の連勝文候補を下した。連候補は、中国国民党の正統を象徴する連戦・中国国民党名誉主席の御曹司。一方の柯候補は台湾大学医学部の外科医で無所属。いわゆる藍(ブルー)と緑(グリーン)という2大政党によるイデオロギーのぶつかり合いとはならなかった。
柯候補は民進党に頼ることなく、自らの力で民意に訴えた。民進党は遠巻きに支持するだけだった。台北市民は柯候補を選んだ。
これは、ひまわり学生運動の学生たちが示した構図だ。民進党などの政党に頼ることなく、自らの力で立法院を占拠し、中国とのサービス貿易協定に異を唱えたのとまったく同じ構図だ。民進党は学生たちを遠巻きにして応援するしか術がなかった。
選挙中、連候補の父の連戦氏は、ひまわり学生運動世代について「社会の不安定を招いている」と批判した。しかし、民意はひまわり学生運動を支持した。
今回の選挙で、台湾の民意は、政党によるイデオロギー対立を望んでいないことが明らかになった。社会の不安定を招いていたのは政党対立だったのだ。台湾の民主主義は新たな段階に入った。
今回の選挙結果で、2016年の初頭に行われる立法委員と総統の国政選挙では、俄然、民進党が優勢になったのかもしれない。しかし、この見方は浅いのではないだろうか。
当選した柯文哲氏が記者会見で「政治を信頼することはすなわち良心を取り戻すことだ」と述べたように、台湾の民意は政党のイデオロギー対立ではなく、台湾人としての良心を取り戻すことにある。民進党は大幅な路線修正を求められている。大勝して浮かれているときではない。
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2014九合一選舉 各縣市長選舉結果【自由時報:2014年11月30日】
 http://www.ltn.com.tw/(カーソルを選挙区に合わせると、全候補者の政党や得票数、得票率が示されます)
次点との差が3万票を切った接戦地区は以下の通りです。
新北市:24,528票
朱立倫(国民党)959,302票(50.06%) 
游錫●(民進党)934,774票(48.78%) ●=方方の下に土
桃園市:29,281票
鄭文燦(民進党)492,414 票(51.00%)
呉志揚(国民党)463,133票(47.97%)
新竹県:5,611票
邱鏡淳(国民党)124,309票(46.94%)
鄭永金(無所属)118,698票(44.82%)
南投県:5,642票
林明?(国民党)149,361票(50.96%)
李文忠(民進党)143,719票(49.04%)
台東県:10,412票
黄健庭(国民党)64,272票(54.41%)
劉櫂豪(民進党)53,860票(45.59%)
澎湖県:5,631票
陳光復(民進党)29,164票(55.34%)
蘇崑雄(国民党)23,533票(44.66%)
金門県:8,819票
陳福海(民進党)23,965票(52.77%)
李沃士(国民党)15,146票(33.35%)(「李登輝友の会メルマガより転載」
杜父魚文庫

コメント

  1. 通りすがり より:

    インドネシアもそうですが、政治の実務経験がない・浅い人間を当選させて大丈夫なの?という不安があります。
    中国共産党と渡り合っていけるのか?という事です。喜ばしい事と不安な事、半々くらいです。

  2. momo より:

    「とおりすがり」さんと同じ懸念をわが国政にも感じる。チルドレン。

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