■ロイター Fiona Maharg-Bravo氏のコラム
[マドリード 27日 ロイター BREAKINGVIEWS]今回の石油輸出国機構(OPEC)総会は大いに待ち望まれてはいたが、案の定がっかりさせられる結果となった。原油価格急落にもかかわらず、現行の生産枠維持を決定。27日の北海ブレント先物は4年ぶりの安値に沈んだ。
OPECが何も手を打たなかったことは、ゴールドマン・サックスの言い方では「新世界秩序」(冷戦後の国際秩序)になぞらえた「新石油秩序」の到来を示唆している。いやむしろ、その主な特性が価格変動にOPECが積極対応しないという点からすると、新たな無秩序という方が似つかわしい。
加盟国は多くを語らないものの、OPEC最大の生産国であるサウジアラビアが米国のシェールオイルブームが沈静化するのを期待して、進んで当座の利益を犠牲にしたようだ。
今進行している事態が本当にその通りなら、サウジは大きな危険を冒しつつある。米国の生産を鈍化させるためにどの程度価格が下がる必要があるかは「藪の中」。大半の専門家は米シェール業界の損益分岐点となる原油価格はバレル当たり60─80ドルのどこかと考えている。しかし掘削担当者の技術が高まるにつれて生産コストは下がりつつある。米シェール業者に採掘をあきらめさせるには、価格を長期にわたってより低い水準にしなければならないかもしれない。
もう1つの読み筋は、世界の原油生産の約3分の1を占めるOPEC加盟国が、価格押し上げに十分なほどの減産が不可能と判断したというものだ。生産枠を減らしても加盟国がそれをきちんと守るかどうかはかなり不透明で、価格が上昇すれば非OPEC諸国、とりわけ米国の増産を促し、そう遠くない将来にOPECがさらに減産する事態へとつながっていく。
その代わりにOPECは単に今後市場動向がより鮮明になったり、より多くの加盟国の間に痛みが広がるのを待ってから、減産を決める可能性がある。
OPECをめぐるさまざまな不透明要素の中で、1つだけはっきりしている点がある。それは比較的経済力が弱い加盟国が苦しむということだ。サウジや他のペルシャ湾岸諸国は潤沢な外貨準備を保有し、高みの見物ができる。だがベネズエラなど他の加盟国は貿易代金支払いのために3桁の原油価格を必要としている。価格下落が続けば、OPECの結束維持はどんどん難しくなっていく。
<背景となるニュース>
◎OPECは27日の総会で、日量3000万バレルという現行の生産枠の維持で合意。北海ブレント先物はバレル当たり76ドルを下回って4年ぶりの安値をつけた。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(ロイター)
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