17975 氷結した道でブレーキを踏んでは危険    古澤襄

東京生まれ、東京育ちの私だが、旧制中学で信州上田で四年、記者になってから仙台二年、北陸五年と極寒と大雪の地域で十一年過ごした。
上田では大雪の経験はなかったが、盆地の寒さは”凍みる”、凍り付く様な寒さで氷結に見舞われた。少年時代だったから凍った池でスケートを楽しんだ。
それが北陸では信州の様な氷結の経験は無かった。その代わり大雪、だが雪が降るとむしろ暖かい。信州よりも過ごしやすいと思ったのも束の間。
雪の中でマイカーを発進させようとアクセルを踏んだら、タイヤが空回りして沈み込む。雪の中でギアをローにすると、このような仕儀になる。セカンドで発進するとユルユルと脱出できる。
夜の道路で黒光したカーブに差しかかる。軽くブレーキを踏んだらマイカーがスピンして一回転。肝を冷やす経験を二度もした。氷結した道ではエンジン・ブレーキを使わないと危険だと身をもって体験した。四十二年昔のことである。
雪の坂道を下る時には、人が通った跡を急いで下るのは転倒する危険がある。むしろ道路脇の雪が残ったところを、カカトから踏み、押しつけるようにして下ると転倒しない。五年間の経験で東京や信州では知らなかった体験を身につけることが出来た。
北陸育ちなら常識なのだろうが、私にとっては怖い思いをしながらひとつひとつ学んだ知らなかった世界。
ことしの冬は、極寒と大雪の地域よりも日頃、雪や氷結のない地域の方が事故が多発するケースが多いと自分の体験で懸念している。
杜父魚文庫

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