17989 ロシア、想定外の経済苦境だが西側へ衝撃的な対抗策を発表    宮崎正弘

■ルーブル下落をいう経済危機は「克服可能」と表明(プーチン大統領)
ロシアのプーチン大統領は12月18日、恒例の記者会見をおこない、「最悪のシナリオは、このルーブル安、原油下落という経済苦境を脱するのに二年かかる」とした。「しかしながら資本規制は見送る」。
原油安はロシアばかりか米国を撃った。シェールガス開発が一気に挫折する展望となって、サウジアラビアの思惑は着々と図に乗っている。
三月のクリミア併呑とウクライナ問題を契機に欧米はロシア制裁にでた。濾紙は農作物輸入を留めるなど対抗措置を講じた。
ロシアに経済政策を継続する欧米には、一方でドイツのようにエネルギーをロシア依存する国があってEUの制裁強硬路線に反対する国もがあり、他方ではフランスのように武器取引を制限する国などとの温度差が顕著である。
ブリスベンのG20で、プーチンは予定を切り上げて急遽帰国した「事件」があった。プーチンは前夜、ヒルトンホテルでメルケル独首相と六時間密室の会談をしており、ウクライナ問題を討議したが、その翌日だけに様々な憶測を呼んだ。
メルケルは東独出身でロシア語が流ちょう、プーチンはKGB時代にドレスデンに滞在したためドイツ語が流ちょうである。
プーチンが帰国後、ロシアは重大な路線変更を発表した。ロシアは原油とガスの輸送ルートを大幅に変更すると衝撃の発表だっただが、日本のマスコミでは話題となっていない。不思議である。
つまりウクライナ経由の対欧輸送ルートをトルコ経由とするのである。
EU諸国のなかでも、ロシアへのエネルギー依存度に濃淡があって、フランスから南欧にかけてはロシアとは貿易額もエネルギー依存度も低いから衝撃は薄いが、このロシアの路線変更に狼狽した国々がある。

 ▼ユーラシアの新しいグレートゲームが始まった
こうしたプーチン大統領の西側接近外交から東へ向きを変えるという外交路線の変更はピョートル大帝以来のロシアの基本姿勢の変更にいたるか、どうか。ともかくG20から帰国後のプーチンは中国寄りをさらに鮮明にし、その上でトルコに急接近した。また先週はインドを訪問している。
「ノーザンストリーム」(北海からドイツへのルート)はそのままだが、「サウザンストリーム」(黒海からルーマニアを経由して欧州へ輸出)をトルクメニスタン、アゼルバイジャンからトルコを経由してバルカンで分岐させ、オーストリア、イタリアなどへの輸出ルートに変更する。
このための投資は50億ドル。半分をガスプロムが負担するとした。
従来の「サウザンストリーム」は黒海からブルガリアを経由する計画だったため「通過料」を失うブルガリアは欧州議会に対ロ制裁を解くよう強く抗議した。
最大の裨益者はトルコである。
しかもトルコはイラン原油がイラクを経由してシリアに運ばれる輸送ルートの建設に反対し、カタールのガスをイラクからシリア経由トルコへ運ぶルートを提案していた。
小誌はトルコのイスラム回帰と脱欧州の動きに注目してきたが、欧米マスコミで悪評高いエルドアン大統領は「勇士連合」に加わったもののISIL対峙には消極的であり、むしろオスマントルコ帝国復活の夢を描いてきた。
2015年の展望は経済危機が続行され通貨戦争が再発することになるだろう。
杜父魚文庫

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