18017 メルケル首相が来年三月上旬に訪日か?     古澤襄

外務省筋によると、ドイツのメルケル首相が来年三月上旬に訪日する方向で日独両政府間の調整が進んでいるという。これが実現すれば、2008年の北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)以来、7年ぶりのメルケル来日となる。
日独関係は必ずしも日英、日仏関係に比して密接な友好ムードだったとはいえない。EU域内で実質的なリーダーと目されるドイツの地位を考えるとやはり奇異な感じを与える。安倍首相とメルケル首相の首脳会談も行われていない。
ひとつにはドイツがアジアの貿易相手国として中国重視の姿勢をとってきたことがある。またドイツはロシアからエネルギー資源をロシア天然ガスに依存しており、またドイツの工作機械などの輸出先としてロシアは重要な相手国。
ドイツは日本と同じように輸出型経済。さらに高い技術力を持つ国家だから、考えようによっては、日本と競合する面がある。
話はガラリと変わるが、東京の虎ノ門から溜池に向かう右側の地下にドイツ酒場があった。大ジョッキでビールを飲みながらジャガイモとタマネギを軽く炒めた料理にソーセージをつまみにしてよく飲んだ。田舎くさいドイツ料理と思わぬでもないが、六本木のイタリア料理にはまるまでは、もっぱらドイツ料理。
私の専攻はドイツ近代史だったから、その影響もあったかもしれない。
そのドイツだが、米国の対ロシア経済制裁には戸惑う面があったのではないか。ロシアとの経済面で密接なつながりがあるから、やり過ぎるとドイツ経済に悪影響が及ぶ。とはいえ米英仏など自由主義陣営の一員のドイツは経済制裁に背を向けるわけにはいかない。
私は執拗なオバマのロシア経済制裁をみていると、その延長線にEUにおけるドイツ弱体化があるのでないか、と疑ったこともある。EU域内でドイツが突出して指導的な立場になると、米国の対欧州政策にとっては懸念材料になる。
当事国のドイツは、そんな米国の空気を敏感に嗅ぎとっているのではないか。日本は北方領土で一定の前進があれば、日ロ経済交流の段階に一歩進む可能性がある。だが米国はこれを喜ぶだろうか。
メルケルが来日すれば、安倍首相に一番聞きたい点ではなかろうか。日米同盟を基軸とする日本としては、何とも返答に窮する日ロ関係といわねばならぬ。
第二次世界大戦で敗戦国となった日本とドイツが対ロ関係で難しい舵取りを迫られているのは、歴史の悪戯といわねばならない。
杜父魚文庫

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