18018 韓国空軍の中国エアショー参加中止    古澤襄

■「軍事技術が漏れる」米国の“待った”に押され
韓国空軍のエリート部隊である曲技飛行チーム「ブラックイーグルス」が11月中旬に中国で開催されるエアショーに参加しようとしたところ、米国から「待った」がかかった。
ショーに参加する空軍機が米国の技術で製造されており、米国としては中国への軍事技術漏洩を恐れるからだ。韓国にとってエアショー参加は「反日」で共闘する中国との軍事協力強化に加え、空軍機売り込みの狙いもあった。
韓国内では「デモンストレーション飛行なのに米国は神経質すぎる」との声もあったが、結局は米の意向に押され、エアショーには参加しなかった。
(岡田敏彦)
■「韓国産」は自国内向け宣伝
曲技飛行チームといえば米国ではブルーエンジェルスやサンダーバーズなど、いずれも軍組織のPRが主な役目。日本でも航空自衛隊のブルーインパルスが華麗な演技を見せている。
こうした曲技飛行チームが、実は韓国にもある。1948年に創設された韓国空軍は米国の援助で操縦者を養成、戦闘機も増やし、67年に「ブラックイーグルス」が誕生した。
機体の老朽化などで2度も解隊されるなど伝統には欠けるが、紆余曲折を経て2010年に復活し、練習機T50を使って韓国内でショーを実施してきた。
今回のトラブルは、そのブラックイーグルスが、11月11~16日に中国・広東省で開催される「珠海エアショー 2014」への参加を決めたことによる。参加は7月に北京で行われた第4回韓中国防戦略対話での合意に基づくもので、「韓中両国の軍事交流強化」が目的だが、米国が「待ったをかけてきた」(朝鮮日報電子版)。
問題はブラックイーグルスが使用している練習機T50にある。韓国では「国産初の超音速練習機」として宣伝しているT50だが、エンジンは米国製のF404(F-18ホーネットのエンジンと同系統)を単発装備するなど、米国の技術を駆使して製造されているのが実情。つまり「名ばかりの国産」というわけだ。
超音速戦闘機の生産は韓国の技術レベルでは難しいといわれ、T50の製造もほぼ全面にわたって米ロッキード・マーチン社が技術指導。国産化比率は26%とのデータもある。これはT50が「米国の軍事技術が詰まった戦闘機」であることを意味する。当然輸出には米国の承認が必用だ。

■「韓国=諜報脅威国」として米国から名指し
エアショー参加で米国が中国への軍事技術漏洩を危ぐするのも当然だった。朝鮮日報(電子版)は「今回は武器輸出ではなくデモンストレーション飛行であるため、米国の反応は神経質すぎる」という韓国内の声を紹介したが、米国はこんな主張に全く耳をかさない。
米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は昨年末、米中央情報局(CIA)の元職員、スノーデン容疑者から入手したとする「電子傍受」に関する内部文書を掲載。それにより米国が軍事、科学技術、情報分野で諜報活動を行う最大の脅威国として、中国、ロシア、キューバ、北朝鮮などとともに韓国を名指ししていたことが明らかになった。
実際、戦車の射撃統制装置や対艦ミサイル「ヘソン」の技術、戦闘機F-15Kの暗視装置、イージス艦のレーダーシステムなど、韓国のパクリ・技術盗用疑惑は限りない。そしてエアショー参加は技術を横流しする格好の舞台にもなり得る。
■ソ連「ミグ」の二の舞を危惧
東西冷戦時代の1976年9月6日、ソ連(当時)のビクトル・ベレンコ中尉がソ連の最新鋭戦闘機ミグ25に乗って函館空港に着陸、亡命した。機体は9月末から「検査」の名の下で米軍により徹底的に分解、調査され、返還したのは11月中旬だった。函館空港ではソ連軍特殊部隊による機体奪還に備え、自衛隊の各部隊も配備についていた。
こうした状況を今回のエアショーにあてはめればどうなるか。中国でT50が故障や不時着をしたり、一部配線を抜くなどの“サボタージュ活動”がなされたりして「飛べなく」なれば、誰が機体を“守る”のか。輸送のためと称して中国側に分解されても、為す術はない。
■売る気満々
エアショーに出る理由は、T50の売り込みだともいわれた。T50は練習機だが、小改造で軽攻撃機「FA50」となるよう設計されており、韓国では輸出しようと躍起。米国と友好関係にあるインドネシアやフィリピンに少数の輸出は決まったものの、大規模導入を決める国は現れていない。
そもそも珠海エアショーは「中国国際航空航天博覧会」の正式名称通り、各国の航空・宇宙産業の関連企業約650社が出展し、各社が軍関係者に売り込みを図る場でもある。ただし出展企業に米国と欧州の企業はなく、中国、ロシアとその衛星国にとどまっている。そんなところへ「自国産」と称して米国技術の機体を売り込みに行く姿勢が、米国にとっては認めがたいことなのだ。
■親中の代償
韓国は旧式化しているF-5、F-4戦闘機などの代替としてステルス機F-35の導入を決定。1機当たりの価格は1211億ウォン(約120億円)で、2018年から21年にかけて総額7兆3418億ウォン(約7400億円)の予算で40機と関連武装などを米国から購入する予定だが、同時に国産戦闘機(KFX)開発も計画しており、購入契約にはKFXへの技術移転も含まれている。
いわば将来の空軍の「あるべき形」を米国に丸投げしているともいえる。こんな状態で米国の技術を第三国に流出させれば、米国が技術漏洩防止の対抗措置を取るのは明らか。F-35は性能を故意に落としたモンキーモデルとなるし、技術移転も名ばかりのものになるだろう。(産経)
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