18106 対話か挑発か 強硬派「朝鮮人民軍」の動向挟み    古澤襄

■微妙な「金正恩路線」の行方
2015年、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)政権は国際社会に対し、どんな外交攻勢を仕掛けてくるのか。ミサイル発射などの強硬路線で挑発してくる可能性はないのか。北朝鮮情勢を展望してみる。
北朝鮮最大の政治日程は、10月10日の朝鮮労働党創建記念日だ。今年で70周年を迎える。金日成(キム・イルソン)時代の1980年10月10日に行われて以来となる第7回党大会を開催し、金正恩第1書記を中心とした唯一指導体制の確立を内外に宣言する可能性が取り沙汰されている。

金正日(キム・ジョンイル)総書記が2011年12月に死去した後、政権を引き継いだ金第1書記の政治・経済・外交政策は、この創建70周年に照準を合わせ、執り行われてきたとみられている。
韓国メディアによると、慶南大学極東問題研究所の「2015年朝鮮半島情勢報告書」では、「金日成時代の主席制、金正日時代の国防委員長体制のように、金正恩時代にふさわしい新たな権力構造を打ち出す可能性がある」との見方を示している。
また、金日成時代の主体思想、金正日時代の先軍思想のような、金正恩時代の思想体系も明らかになる可能性があるとみている。
今年はこのほか、金正恩氏が体制発足後初めて外国を訪問するかどうかも焦点だ。創建70周年の今年こそ、初外遊を敢行し、初の首脳会談に臨むとみる専門家は多い。初の首脳会談の相手候補として下馬評に上っているのが、ロシアのプーチン大統領である。
ロシアはウクライナ問題などで国際社会の経済制裁下にあり、北朝鮮と境遇が似ている。金正恩政権による核実験強行と親中派、張成沢(チャン・ソンテク)元国防副委員長の処刑により中朝関係が悪化した状況が続く現在、米欧を牽制(けんせい)するための北朝鮮の提携先としてはロシアほど最適な国家はない。
また、飛行機嫌いのためわざわざ列車でロシアを訪問した金正日氏とは異なり、金第1書記には専用機があり、短期間の訪問日程が組める。
昨年11月には最側近の崔竜海(チェ・リョンヘ)党政治局常務委員がロシアを訪れ、プーチン大統領と会談しているが、金第1書記の訪露に向けた準備だったとも報じられている。
同時に、金正恩政権が経済制裁の緩和などを求め、米国や韓国、日本に対話攻勢を仕掛けてくる可能性もある。10月10日の創建記念日に向けて、金第1書記は経済面で成果を挙げ、少なくとも指導層や平壌など主要都市の住民に恩恵を施さなければならない。
しかし、これまでの北朝鮮同様、こうしたソフト路線が朝鮮人民軍などの強硬派の反発を招いた場合、金正恩政権が突如、国際社会への挑発路線に転じる事態もありうる。
10月10日の創建70周年前後に、“祝砲”として、長距離ミサイルの発射や4回目の核実験を電撃的に行う可能性も指摘されている。
(産経)
杜父魚文庫

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