18137 風刺週刊紙を襲撃した二人と警官隊がパリ郊外で銃撃戦    古澤襄

仏AFPによれば、風刺週刊紙シャルリー・エブドを襲撃した二人はパリ郊外で武装警官隊に囲まれ、民家に逃げて人質をとって銃撃戦になっているという。

 

NHKによれば二人が立てこもっているのは、パリから北東におよそ40キロのダマルタンアンゴエル近くの会社で一人が人質になった。

 

一方、イスラム国は二人を”英雄的”と誉めたたえた。

 

勢いの赴くところ二人が抵抗すれば、武装警官隊はテロリストと断定して射殺も厭わないであろう。それはまたイスラム過激派は”殉教者”として第二、第三のサイド・クワシとシェリフ・クワシを生むことになりかねない。

 

シェリフ容疑者は聖戦に参加するよりもラップ音楽が好きだったとの証言もある。多くのイスラム教徒はテロリストではない。しかし今度の事件が悲劇的な結末を迎えれば、イスラム教徒をテロリスト視する報復の連鎖が起こる可能性がある。

 

パリ・ロイターは欧州各地で反移民の機運を一段と高め、宗教や民族的なアイデンティティーをめぐる「文化戦争」を燃え上がらせる可能性があると警鐘を鳴らした。

 

■(1月9日 AFP)フランス・パリ(Paris)北東郊外で9日、風刺週刊紙シャルリー・エブド(Charlie Hebdo)本社襲撃事件の容疑者とみられる2人が警察とカーチェイスになり、銃撃戦の末、人質を取っている。(AFP)

 

■銃乱射の兄弟と警察の間で銃撃戦 人質も

 

パリの新聞社を狙った乱射事件で、パリから40キロの町で、乱射事件の容疑者の兄弟と警察の間で新たな銃撃戦が発生し、兄弟は近くの会社に押し入り、現在、1人を人質にとって立てこもっています。

 

フランスの捜査当局によりますと、9日午前9時すぎ(日本時間の9日午後5時すぎ)、パリから北東におよそ40キロのダマルタンアンゴエル近くで、2人の武装した男と警察官の間で銃撃戦がありました。

 

フランスのメディアによりますと、2人が車を奪って逃走した際、この車の所有者が2人を目撃し、パリの新聞社の乱射事件の容疑者に似ていたと証言しているということです。

 

フランスのカズヌーブ内相は、地方の知事との会議の中で、「2日前に起きた事件の容疑者を確保するための作戦が行われている」と述べ、この2人がパリの新聞社を狙った乱射事件の実行犯のサイド・クワシ容疑者(34)と弟のシェリフ・クワシ容疑者(32)と断定していることを明らかにしました。

 

フランスのメディアによりますと、2人はその後、車で逃走して近くにある会社に押し入り、人質1人を取っているということです。

 

現場は、乱射事件の実行犯の捜索が行われていたフランス北部の町とパリのほぼ中間に位置しており、フランスの捜査当局はクワシ容疑者兄弟を実行犯と断定し、特殊部隊を含む8万8000人の態勢で2人の行方を追っていました。

 

■2人の人物像

 

フランスの捜査当局が実行犯と断定したサイド・クワシ容疑者(34)と弟のシェリフ・クワシ容疑者(32)は、幼くしてアルジェリア人の両親を亡くし、児童養護施設などで育ったとされています。

 

このうち、弟のシェリフ容疑者について、AFP通信は、フランス北東部のランスで育ち、その後、パリの宅配ピザの店で働いていたと伝えています。

 

10年ほど前から、宗派対立が続いていたイラクに戦闘員を送り込んでいた「ショモンの丘」という組織に所属し、2005年にシリアを経由してイラクに渡ろうと旅立つ直前に当局に拘束されたということです。

 

当時の弁護士は、自分が覚えているシェリフ容疑者は今回の事件を起こすような人物ではなかったと話しています。

 

この年、フランスの公共放送が放映したドキュメンタリーでは、シェリフ容疑者がラップを歌う姿や野球帽をかぶりジーンズ姿で歩く姿が紹介されていました。

 

シェリフ容疑者は2008年に有罪判決を受けましたが、公判でシェリフ容疑者は聖戦に参加するよりもラップ音楽が好きだと証言していたということです。

 

ロイター通信は、収監されていた間の経験がシェリフ容疑者を別人に変えてしまったという弁護士の話を伝えています。

 

一方で、兄のサイド容疑者は、詳しい経歴が分かっていませんが、AFP通信は、アメリカの当局者の話として、2011年に中東のイエメンで国際テロ組織アルカイダ系のグループに加わり、射撃の訓練を受けていたと伝えています。

 

フランスのカズヌーブ内相は、捜査当局が兄弟2人の行動を監視していたことを明らかにしています。

 

■仏銃撃事件で炎上か、イスラムめぐる欧州「文化戦争」

 

[パリ 8日 ロイター]イスラム教を繰り返し風刺していたフランスの週刊紙「シャルリエブド」の本社銃撃事件は、欧州各地で反移民の機運を一段と高め、宗教や民族的なアイデンティティーをめぐる「文化戦争」を燃え上がらせる可能性がある。

 

7日にパリ中心部で起きた同事件では、覆面をした複数の人物が建物に押し入り、「アラー・アクバル(神は偉大なり)」と叫びながら編集者や著名風刺画家ら12人を殺害。事件直後にはフランス国内で、社会の結束と言論の自由を訴える声が沸き上がった。

 

しかし、経済停滞と高い失業率に苦しむ同国では、そうした動きはあたかも「束の間の停戦」のように映る。フランスは欧州最大のイスラム人口を抱え、国家のアイデンティティーとイスラム教の役割をめぐる激しい議論の真っただ中にある。

 

欧州大学院の政治学者で中東問題の専門家オリビエ・ロイ氏は、今回の事件で「フランス国内でイスラム嫌悪が一段と強まるのは必至だ」と語る。

 

フランスの作家でジャーナリストのエリック・ゼムール氏は著書「Le suicide francais(原題)」の中で、大量のイスラム移民が同国の世俗的な価値観を破壊する一因になっていると書いたが、同著は2014年のベストセラーとなった。また、作家で詩人のミシェル・ウエルベック氏は、2022年にはイスラム教徒のフランス大統領が誕生し、宗教学校や一夫多妻制、女性の労働禁止制度を導入するという内容の小説を発表し、年明けに大きな話題を呼んだ。

 

シリアやイラクで一大勢力を築いた過激派組織「イスラム国」にフランスからも多くが参加していることも、社会の不安を募らせている。治安当局は、イスラム国の思想に染まった帰国者が大量殺りくを起こす可能性に警戒を強めている。

 

極右政党の国民戦線(FN)は、事件発生から時を移さず、過去数十年で最悪の政治的暴力行為を移民の問題と結び付け、死刑制度の復活をめぐる国民投票の実施を求めた。

 

一方、フランスのイスラム教指導者は、シャルリエブドの風刺に対する正しい反論の方法は、流血や憎悪を通じてではないと呼びかけた。

 

<追悼と報復>

 

世論調査で支持率を伸ばす国民戦線のマリーヌ・ルペン党首は、「イスラム原理主義」がフランスで宣戦を布告したとし、それに対する強力かつ有効な対策が求められると述べた。

 

ルペン党首自身は、フランス的な価値観を共有する一般的なイスラム教徒と、「イスラムの名を借りた殺人者」を注意深く区別している。ただ、同党創始者でルペン氏の父親であるジャン・マリー・ルペン氏と、同党副代表のフロリアン・フィリポ氏は、もっとあからさまだ。

 

フィリポ氏はRTLラジオに対し、「イスラム急進主義と移民が一切関係ないと言う人は別の惑星に住んでいる」と語った。

 

事件から一夜明けた8日、イスラム教指導者らはシャルリエブドの本社の外で祈りをささげ、国を挙げた服喪に参加するよう信者に呼びかけた。

 

一方、この日未明には事件への報復とみられる襲撃が相次ぎ、同国西部ルマンのモスク(イスラム礼拝所)で発砲があったほか、東部ビルフランシュシュルソーヌでもモスク近くの飲食店で爆発があった。

 

オランド大統領は先月、移民を経済および文化的な恵みとして受け入れるよう国民に呼びかけ、景気低迷のスケープゴートにしてはならないと強調した。これに対し、政界復帰を狙うサルコジ前大統領は、不法移民の取り締まり強化を求めている。

 

昨年フランスで実施された調査では、国民は移民が人口の31%を占めていると考えていることが分かった。これは実際の数字の約4倍となる。フランスは民族的もしくは宗教的な人口統計は取っていないが、ピュー・リサーチ・センターによる調査では、同国の人口に占めるイスラム教徒の比率は約7.5%となっている。国民との意識に差はあるが、同数字は、オランダの6.0%、ドイツの5.8%、英国の4.4%を大きく上回っている。 

 

<問われる多文化主義>

 

「西洋のイスラム化に反対する愛国的欧州人(PEGIDA)」と名乗る団体は、ドイツがイスラム教徒によって侵略されていると主張し、ドレスデンで毎週、最大1万8000人が参加する反移民デモを開催している。

 

メルケル首相ら政界のリーダーは国民に対し、反移民デモとは距離を置くよう呼びかけ、首相はデモ主催者を「心に憎しみを宿している」と強い調子で非難している。

 

ドイツでのPEGIDAの台頭は、反ユーロを掲げる右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の躍進も関係している。そのPEGIDAは仏紙銃撃を、自分たちの考えを正当化する事件として飛びついた。

 

フェイスブック上で同団体は「イスラム教徒がフランスで示したのは、自分たちに民主主義の能力がなく、その代わりに暴力と死を解決策と考えていることだ」と主張。さらに「われわれの政治指導者たちは反対のことを信じ込ませたいようだが、ドイツでもまずこうした悲劇が起きなくてはならないのか」と書き込んだ。

 

昨年11月にドイツで行われた調査では、イスラム教徒ではない国民の57%が、イスラムによる脅威を感じていると答えていた。

 

英国では、反欧州連合(EU)を掲げる英独立党(UKIP)の党首ナイジェル・ファレージ氏が、仏紙襲撃事件は、自国の中に存在する敵勢力によって起こされたと主張。LBCラジオに対し「英国は他文化から来た人たちに自分たちの文化の中にとどまるよう奨励し、社会に完全に溶け込まないよう仕向けていた」と語った。

 

この発言に対しキャメロン首相は、自身も多文化主義を失敗と呼んで移民の制限を求める立場だが、今は政治ゲームとする時ではないと非難した。 

 

社会科学者らは、フランス式の同化主義的移民政策も、米国や英国などの多文化主義的移民政策も、社会から疎外された若いイスラム過激派による暴力は抑えられなかったと指摘する。

 

10年前に映画監督のテオ・ファン・ゴッホ氏がイスラム教徒によって射殺された記憶が残るオランダでは、強硬な反イスラム主義者である自由党のヘルト・ウィルダース氏が、世論調査で高い支持を集めている。ウィルダース氏は仏紙銃撃事件の発生直後、オランダへのイスラム移民流入をストップさせるよう求め、「西側は戦争状態にあり、脱イスラム化すべきだ」との声明を出した。

 

極右の反移民政党が勢力を伸ばす北欧諸国では、イスラム教指導者らが、自分たちのコミュニティーは暴力の波にさらされていると訴えている。

 

スウェーデンのイスラム協会の会長オマール・ムスタファ氏によると、イスラム社会を狙った放火事件や人種差別的攻撃が相次いだのを受け、多くのモスクが夜間巡回を始めたという。同氏は「厳しい時期だ。憎しみの力や反民主主義的な力が、右派の過激主義者と宗教的な過激主義者の両方に重い課題を突き付けようとしている」とロイターの取材に語った。 (ロイター)

 

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