18157 健康食品「山ブドウワイン」の天敵”熊”    古澤襄

十数年前になろうか、岩手県西和賀町で杜父魚塾を立ち上げて塾長に納まり、町おこしの勉強会をやった。その頃、県下の市町村ではワイン造りに目をつけて、新産業としていろいろな試みがあったが、良いとなると過当競争になって共倒れするケースも散見された。


そんな中で共倒れにならない「山ブドウ」「野ブドウ」ワインがあると聞いて、バスで岩手県岩手郡葛巻町の葛巻高原食品加工株式会社の見学に行った。


この「くずまきワイン」はたしかに様々な困難を克服しないと新産業として成り立たない。だがひとたび成功すると地域の農家を含めて他の追従を許さない新商品になる。


岩手の山間地では山ブドウを絞った果汁が妊産婦の健康維持に良いとされ、重宝されてきた歴史がある。


山ブドウの果汁に目をつけて、ワイン化する試みは困難を伴うが、健康食品として認知されると「くずまきワイン」のように魅力ある新商品になる。


山ブドウは昔から、滋養強壮や増血の効果があるとされてきた。濃い赤紫色の果汁は酸味が強く、抗酸化物質のポリフェノールのアントシアジンが、活性酸素の生成を抑え、血液をサラサラににして血圧を下げることが医学的に証明されている。


その半面、山ブドウは果実が小さいので搾汁率が低い難点がある。近隣の農家が継続的に栽培し、それを醸造工場で集荷するシステムが欠かせない。西和賀町の山間部でも山ブドウ、野ブドウが自生している。これを栽培農業化して醸造工場に出荷できないか、というのが工場見学の狙いであった。


年々歳々、山ブドウ、野ブドウが少なくなっているので狙いは良かったと思う。だが、思わぬ天敵が現れた。熊である。山ブドウは熊の好物。最近では野に下りてきて、野ブドウまで食いあさる。


熊にやられないように防護柵を作ると、それなりの費用がかかる。コスト面で山間地の農家に耐えられる負担になるだろうか、という課題が発生している。この課題はまだ克服できていない。


■熊の好物・野ブドウの赤ワイン(再掲) 古沢襄


昨夜は夜の十一時近くまで来客と四方山話。骨髄腫は感染症にかかり安いので、用心して都心に出ることはなくなった。代わりに友人がやってくる。マイカーでくるので酒は出さない。もっぱら中国茶のサービス。決まって中国茶の講釈を長々とやるものだから、相手も迷惑至極なのだろう。顔にでている。


講釈師の私はワインを舐めながら、中国茶との両刀使い。以前は日本酒の一升ビンがゴロゴロしていたが、今はワイン一色。冷蔵庫に入れると冷え過ぎるので、台所の床下にある二つの収納庫がワイン専用になっている。ワインは横にして保存するものである。私が横にしておくと女房がいつの間にか立てている。


今は長野の従姉が贈ってくれたフランス・ワインを飲んでいる。「ボルドーの赤ワイン」だが2005年ものだから大したものではない。渋みが勝っている。まだ二本残っているが、そろそろ補充しなければと思っていたところに、親友の全英和尚が岩手の「くずまきワイン」を六本送ってきてくれた。


くずまきワインの原料は山ブドウ。これも渋みが勝るが健康にいい。野ブドウは熊の好物である。山間地で野ブドウが熊にやられないように防護柵を作って醸造工場に出荷している。年々歳々、野ブドウが少なくなっているので、野趣味豊かな山ブドウ・ワインは貴重品になった。


私の住む守谷市の近くに「牛久ワイン」がある。値段も一〇〇〇円程度で手頃なので、以前はこれを愛飲していた。今は値段が少し張るが、「甲州ワイン」の甘味がある赤ワインを飲んでいる。


数年前のことになるが、盛岡で志賀かう子さんにドイツ料理店に連れていって貰ったことがある。防衛庁長官だった志賀健次郎氏の娘さんでエッセイスト。飲み物を注文されて、恰好をつけてワインを注文した。


注文してからドイツ料理店だから、ビールを頼めば良かったと気がついたが後の祭り。日本酒党だからビールが思いつかなかった。日本酒では笑われると思って、とっさにドイツ料理店でワインを注文してしまった。フランス・ワインが出るかと思っていたら、モーゼル型のドイツ・ワインが出てきた。緑色のボトルである。


佳人・志賀かう子さんとの会食だったせいもあるが、このドイツ・ワインの味が忘れられない。調子に乗って二本空けて、すっかり酩酊し、志賀かう子さんのマイカーでホテルまで送りとどけて貰う醜態を演じてしまった。


ビールの二日酔いも苦しいが、ワインの二日酔いも大変な目にあう。それが日本酒だと翌日の夕方から迎え酒をすれば、二日酔いが納まる。ワインの迎え酒をやったことはない。


日本ではワインは、日本酒や焼酎、ビール、ウイスキーほど消費量が伸びていない。十年前に、赤ワインに含まれているポリフェノールが動脈硬化を防ぐ働きがあると発表されてからは、ワインの出荷・輸入数量が伸びたが、ここ数年は横ばい状態となっている。


ワインの消費地も東京都を筆頭に大阪、神奈川、埼玉、北海道の順。都会派の飲み物ということだろう。田舎好みの私にはちょっぴり寂しい気がする。(杜父魚ブログ 2007.11.02 Friday name : kajikablog)
 
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