18159 中国海軍、相反する「接近」と「挑発」 測れぬ真意    古澤襄

■「雪解け」に暗雲? 12日に防衛当局間協議


海上自衛隊と中国海軍の間で不測の事態を回避するための「海上連絡メカニズム」の運用開始に向けた防衛当局間の作業部会が12日、東京都内で開かれる。昨年11月の首脳会談に続く日中間の「雪解けムード」を象徴する動きだが、昨年末には尖閣諸島(沖縄県石垣市)を含む日本周辺の空海域で中国軍の活動が活発化した。「接近」と「挑発」。相反するように見える動きに日本政府関係者は中国側の真意を測りかねている。(杉本康士、山本雄史)


■報道発表にも配慮?


12日の作業部会には防衛省・海上自衛隊と中国国防省・海軍の当局者らが参加するが、事前に公表されず、協議終了後に行われる報道陣向けの説明は13日に持ち越される可能性もあるという。防衛省関係者は「中国側の意向があるから、日本だけの判断ではできない…」と漏らす。


日中両政府は昨年11月10日の首脳会談の直前、日中間の「危機管理メカニズム」を構築することをうたった合意文書を発表。平成24年5月に大筋合意したまま凍結状態となっていた海上連絡メカニズムの運用開始に向け、ようやく動き出した。


しかし、合意文書をめぐっては、外務省幹部ですら「具体的な何かを合意したものではない。状況は変わっていない」として緊張状態を緩和するだけの“効力”はないことを認めている。


■首脳会談後に変化


首脳会談の翌月から中国軍の活動に変化も起きた。


自衛隊は先月4日に中国海軍の駆逐艦やフリゲート艦など4隻が鹿児島県の大隅海峡を通過し、同25日には宗谷海峡を抜けて東シナ海に向けて航行したことを確認。日本列島を周回する動きは25年7月以来で、自衛隊統合幕僚監部は「特異行動」として発表した。


先月6日以降には中国軍機が沖縄本島と宮古島の間を相次いで通過したが、これも9カ月ぶり。中旬には中国海軍艦艇が尖閣北方約70キロの海域で航行していることも確認された。


中谷元・防衛相は今月9日の記者会見で「中国の海軍による太平洋への進出回数が増加傾向にある。今後、中国は活動領域を一層拡大するとともに、活発化をさらに進めていくものと認識している」と警戒感を表明したが、一連の背後にある中国側の意図は明らかになっていない。


■政府内に楽観的観測も


日本政府内には「西太平洋で行われた演習に伴う動きで、政治的な意図はない」(防衛省幹部)と楽観する声がある一方で、「海上連絡メカニズムが運用開始されるまでの間の駆け込み的な既成事実づくり」(防衛省関係者)との見方もある。習近平国家主席が昨年9月に訪印した際、中印両国が領有権を争うカシミール地方に中国軍が越境した例もあり、「接近しながら挑発するのは、習政権の外交パターンだ」と語る政府関係者もいる。


「海だけでなく、空にもメカニズムを広げたい」


昨年11月、中国軍関係者は日本政府関係者に対し、海上連絡メカニズムに関して非公式にこう呼びかけた。


メカニズムは艦船だけではなく、艦載機などの航空機も対象として大筋合意済み。新たに提案された「空」の枠組みが、中国が一方的に設定した防空識別圏の問題を含むのであれば日本側としては受け入れられない。12日の作業部会で中国側が正式にこの問題を議題とするよう求めれば「メカニズムの議論のやり直しになる」(防衛省関係者)おそれもある。(産経)
 
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