18287 イスラム国要求の死刑囚釈放の期限経過     古沢襄

■「ゲーム終了」との見方も

イスラム過激派組織「イスラム国」による日本人人質事件で、イスラム国が後藤健二さんの解放条件としてヨルダン政府に要求しているイラク人女死刑囚の釈放期限の29日夜が経過した。しかしヨルダン政府は、イスラム国に拘束されているヨルダン空軍パイロットが生存している証拠を示すよう依然求めている。

ヨルダン政府は、昨年12月にシリア北東部で墜落した戦闘機に搭乗し、イスラム国に捕獲されたこのパイロットとの交換で、ヨルダンに収監中のサジダ・リシャウィ死刑囚を釈放する用意があると表明している。

ヨルダンのモマニ・メディア担当相は「パイロットが生存しているとの証拠を要求しているが、これまでのところ何の情報も得ていない」と述べた。リシャウィ死刑囚は、2005年にアンマンで起きた大規模連続テロ事件で、自爆テロを試みたが失敗に終わり、裁判で死刑判決を宣告された。

日本政府は29日、ヨルダン政府のほか、イスラム国が人質交換の場所に指定したトルコと協力して、事態解決を図る方針を改めて明らかにした。イスラム国が設定した期限は経過したものの、今のところ新たな動きがあったとの情報はない。

イスラム主義グループ問題の専門家であるハッサン・アブ・ハニ氏は「ゲームは終わった。ヨルダン政府はすべてのカードを使い果たしたが、イスラム国と合意には達しなかった」と語った。拘束されているパイロットのいとこは「政府は我々に、容易ではない状況にあると通知してきた。息を殺して事態を注視している」と話した。

イスラム国とヨルダン政府の交渉の最大の不透明要因は、どのような形の交換が模索されているかで、双方に共通の理解が出来上がっているのかどうかははっきりしていない点だ。

ヨルダン政府は、パイロットの釈放と交換に女死刑囚を釈放する用意があるとしているが、後藤さんについては言及していない。一方イスラム国が想定しているのは後藤さんの解放で、パイロットの釈放は必ずしも想定しているわけではない。

ヨルダンとイスラム国との交渉については、過激派グループを正当化し、さらなる誘拐を引き起こす恐れがあると懸念する向きもある。

過激派問題の専門家である米ノースイースタン大学のマックス・エイブラハムズ教授は「収監中の大物テロリストを釈放することは大変なことである。今後こうした要求が増える恐れがある」と懸念する。(米ウオールストリートジャーナル)

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