18292 米、アサド政権「容認」 対テロ優先    古沢襄

■シリア政策転換か

 
【ワシントン=加納宏幸】シリアのアサド政権打倒を掲げてきたオバマ米政権が、当面はアサド政権の存続を容認する方針に転じたもようだ。

アサド大統領の指揮下にあるシリア政府軍が同国内を拠点とするイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」に打撃を与えることを期待したものだが、自国民に化学兵器を使ったとして国際的非難を浴びてきた同政権を延命させることに対して批判が高まる可能性がある。

アサド政権の後ろ盾であるロシアは28、29日、同政権と一部反体制派を仲介し、モスクワで和平協議を開き、シリアの主権と統一を維持し外国の干渉を防ぐとする「モスクワ諸原則」で合意した。

反体制派の有力組織「シリア国民連合」はアサド体制の維持につながるとして協議に参加しなかったが、ケリー米国務長官はジュネーブで今月14日、「ますます多くのテロリストがシリアに引き付けられている。ロシアの取り組みが有益であることを望んでいる」と述べ、アサド政権を当事者とする協議を歓迎した。

これについて米国内では、オバマ政権が最終的にはアサド氏の退陣を希求しつつも、イスラム国の脅威を封じ込めるため当面は政権を存続させる政策に転じたと受け止められている。

欧米外交筋は米紙ニューヨーク・タイムズ(20日)に対し、「(アサド政権の)より漸進的な移行を考慮する価値がある」と語った。

米中央軍は26日、シリア北部の要衝、アイン・アラブ(クルド名コバニ)の約90%をクルド人部隊がイスラム国から奪還したと発表したが、イスラム国の勢力は衰えていない。

米軍による穏健な反体制派勢力への訓練が本格化するのは3月以降とされ、米政府としては当面、アサド政権をイスラム国に対抗させておきたい方針とみられる。

これに対し、29日の上院軍事委員会の公聴会では、ホワイトハウスにシリア政策を明確にするよう迫ってきた共和党のマケイン委員長が「オバマ政権は外交政策が受け身で、イスラム国を壊滅させる戦略がない」と重ねて批判した。

また公聴会ではキッシンジャー元国務長官が、イスラム国の除去は最も差し迫った課題だと証言。「2つの敵(アサド政権とイスラム国)がともに米国に対抗し、互いに暴力的に戦っている。いずれの勝利も米国の国益にならない」とシリア情勢の複雑さを説明した。(産経)

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