アルジェリアの中部砂漠地帯、イナメナスにおけるイスラム過激派テロ集団による十人の日本人殺害事件は二年前の一月十六日であった。
その数日後に通常国会が開会され、衆議院本会議で安倍総理の所信表明演説が行われた。
私は、安倍総理に強い「報復」の決意表明を期待した。
人命尊重も話し合いも人権尊重も、およそ戦後日本で多用される理念の通用しないテロリストの殺戮行為を、有効に「抑止する」のは、目には目を歯には歯をの「報復」しかないからである。
従って、安倍総理が、「日本は貴様らテロリストに報復する」との所信表明を行うことは、確実に海外にいる日本人同胞の命を守る効果がある。
しかし、安倍総理からは「強い憤り」は語られても「報復」の決意表明はなかった。
この度のシリアにおけるイスラム教スンニ派過激組織による二人の日本人殺害に対して、安倍総理は、
「その罪を償わせるために国際社会と連携してまいります」、
「テロと戦う国際社会において、日本としての責任を毅然として果たしてまいります」
と表明したが、日本に「報復攻撃」の正当性があるにもかかわらず、「報復」という言葉の使用を巧妙に避けている。
つまり、安倍総理の日本は、「報復」をしないのだ。
片や、パイロットを同じ過激派に無惨に殺されたヨルダンが、直ちに大規模な「報復爆撃」を実施している。
日本とヨルダンと、どちらが「テロと戦う国際社会」の常識に適っているか。即ち「責任を毅然と果たしている」か。答えは明らかであろう。
相手のテロリストは、声明を発して、「このナイフはケンジを切り裂くだけでなく、どこであろうとおまえの国民が発見されれば殺戮を続けるだろう」と、おまえ(安倍)を名指しで言い放っている。
これに対して、安倍総理は、日本国民の安全を確保するために、最大のテロ抑止効果を持つ「報復する」という決意表明を以て対抗すべきである。
しかし、再度言う。ヨルダンと対照的に安倍総理は何もしない。この理由を質されれば、官僚の用意した「憲法」によって説明するのだろう。
さて、この政治の世界の裏切りに近い不作為とは別に、私の脳裏には、以前から、我が国の特殊部隊とりわけ習志野にある「特殊作戦群」のことがある。
彼らは、日夜厳しい訓練を続けている。政治の世界の裏切りに近い不作為とは正反対に、彼らは常に宣誓した通り、「危険を顧みず国民の負託に応える」ための厳しい訓練を続けている。
そして、イナメナスの十人殺害事件に遭遇し、ますます彼らの存在と運用が現実味をおびてきた。
そこに、この度の「イスラム國」の残忍なテロである。
ここにおいて習志野の特殊作戦群の諸君は、これら日本人同胞が殺戮されて行くテロと、武力の行使はできないと他人事のように決め込んでいる国内政治を同時に観ながら、如何なる思いで、また如何なる覚悟を以て、いざという時のために、日々の訓練を続けているのだろうか。
特殊作戦群の諸君らに、私は、心より、まことにありがとう、と言いたい。
我が国家と国民が、国際的テロにさらされている現在、世界最精強の特殊作戦群の存在と、隊員の至高の練度と闘魂に感謝せざるをえない。
特殊作戦群の隊員は、潜入地域の言語に精通し体力のみではなくメンタル面の訓練を受けた精鋭である。訓練内容は公表しない。それは、想像を絶する厳しさである。
特殊作戦群が創設(平成十六年三月)されてからしばらくして初代群長の荒谷氏に会いに習志野に行った。
そして、隊員の立ち居振る舞いを観てから荒谷群長に、尋ねた。「北朝鮮に潜入して、拉致被害者を救出してくることができるか」
ドイツ軍とアメリカ軍の特殊訓練過程を抜群の成績で終了してきた荒谷群長が即座に答えた。
「命令があれば行きます。救出して還ってきます。」
それは断固とした単純明快な答えだった。即ち、「国家が命じた任務は必ず遂行する」、何人戦死してもやると、群長が即座に言い切ったのだ。
それ以来、特殊作戦群の厳しい訓練を続けている隊員諸君のことが脳裏から離れない。
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コメント
国際社会ではこの明快な論理は受け入れられると思う。
しかし今の日本ではまだまだハードルが高すぎる。
ちょうどTV放映で習志野の特殊部隊、黒覆面姿みました。
彼らの出番はあるのだろうか。
平和立国日本、憲法やら他政党、左翼的勢力、マスコミなどはどうでるか。結果を見てまた他人ごとみたいにたたきそう。
また国民そのものの考え。意外と無関心・・。
安倍政権はやっと国際社会に基盤をつけつつある段階。今までの政権が短命で存在なさすぎ。今後いずれ政権かわればまた混迷期に入らないとも限らない。いや第三次世界大戦への道になるとすれば困る。