■ロイター・コラム Robin Niblett氏の見解
[12日 ロイター]ベラルーシの首都ミンスクで12日に合意されたウクライナ停戦は、1つの問題を提起している。それは、欧米各国の政府が過去数週間にわたり激しく議論してきた、ウクライナ軍への武器供与という考えを見送るべきかどうかということだ。
ロシアのプーチン大統領はこの数カ月、昨年9月の停戦合意は戦略的敗北だと結論づけていたように思える。当時、ウクライナからの分離を求める親ロシア派勢力が支配していたのは、東部ドネツク州とルガンスク州を合わせた地域のわずか3分の1にすぎなかった。
これでは、ウクライナを従属させるというプーチン大統領の長期的目標の達成手段を得ることはできないはずだ。そしてロシアが今年に入り親ロ派への新たな軍事支援を行った結果、戦闘は激化し、ウクライナ政府と親ロ派の双方で市民と兵士の命が犠牲となった。
親ロ派は1月半ば以降、ドネツクの空港を再び制圧するなど、いくつか重要な勝利を収めてきた。だがそれでも、親ロ派がドネツクとルガンスクの両州を支配するには程遠かった。では、何が親ロ派とプーチン大統領を交渉の場に着かせたのだろうか。
ウクライナの抵抗と西側の経済制裁による影響が、役割を果たした可能性はある。制裁は戦闘が悪化するにつれ、解除される可能性が低くなるばかりだ。だが何よりも、窮地に立たされたウクライナ軍への武器供与をめぐる議論が大きな要因だと言える。
ウクライナ軍への武器供与は、米国の元高官や軍幹部らが先週末に独ミュンヘンで開催された安全保障会議を前に発表した報告書でも、強力に支持されている。それによると、経済制裁はロシアがウクライナに軍事介入する抑止にはなっておらず、その結果、冷戦後の欧州の秩序を分裂している。
同様に、ロシアによる親ロ派支援への抑止力にもなっていない。自衛の意思があり、またその権利があるウクライナ軍に必要なのは適切な装備である。米国とその同盟国は、ウクライナの自衛を積極的に支援すべきであり、そうすることで親ロ派に顕著なダメージを、プーチン大統領に対してはロシア兵の犠牲という政治的代償を与えることが可能だという。そうなれば交渉の場に出てこざるを得なくなるというのだ。
一方、ドイツのメルケル首相はこうした意見への反論を明確に展開した。ウクライナ情勢で軍事的解決はあり得ない。なぜなら、事態を悪化させることができるのは西側よりプーチン氏であり、同氏の方が問題を多く抱えているため、そうする可能性がある。
米国がロシアを倒そうと企てているというロシア国内の過熱した報道を考えれば、プーチン氏が米国から武器支援を受けたウクライナ軍に屈することは、外交的妥協を受け入れるのと同じくらいあり得ない。
そして西側が武器を供与する道を突き進み、その武器によってロシアの「同国人」が殺害されたなら、欧州各国とロシアの関係は今後何十年にもわたって双方に多大なダメージを与える「凍結の時代」に突入する可能性があると主張した。
このような結末を回避するため、メルケル首相は賭けに出た。6日にフランスのオランド大統領と共にプーチン大統領と会談。そして11日の会談では、合意が見えなければ会わないとしていた。プーチン大統領がメルケル首相と合意に至らなければ、武器供与を主張する米国に抵抗する同首相の手腕が著しく損なわれていただろう。
それからどのようにして今回の停戦合意に至ったのか。まずは、昨年9月の停戦合意とおおむね似ていることを認識することが重要だろう。そして、昨年の合意がプーチン大統領の戦略的目標を明らかに前進させなかったことを考えると、戦闘が再開される恐れも否定できない。また、非武装地帯が設けられておらず、この点においても戦闘が再び勃発するリスクが残されている。
こうしたことを念頭に置きながら、米国とその同盟国は速やかに協議し、西側が予期すべきことと要求を明確に打ち出す機会として、今回の停戦合意を捉える必要がある。第一に、現行の停戦ラインを越えた戦闘の拡大は、ウクライナ政府の政治的主権に対する攻撃とみなされると明言すべきだ。そのような状況下において、北大西洋条約機構(NATO)加盟国は、ウクライナへの武器供与を決めた国々の邪魔はしないと。
第二に、今回の停戦合意が完全に履行されるまで、現在実施されている経済制裁の緩和を検討しないことを表明すること。それには、欧州安全保障協力機構(OSCE)が無制限に視察できたり、ウクライナ政府がロシアとの国境を確実に支配できたりすることを含む。
その間にも、欧州やその他の各国政府は、ウクライナが計画していた経済改革を開始するなか、表明していた支援を最後まで行うことが肝要だ。
もし戦闘が再開し、遠からずロシアの政策が変更されるならば、西側の軍事支援は経済制裁に比べて以前より効果的ではないかもしれない。軍事支援は実際に戦闘を悪化させる可能性がある。
しかしながら、軍事支援も経済制裁も、その目的は主としてロシアにその行動に対する代償を課すことにある。過去70年かけて築き上げてきた繁栄と安全保障の礎となる価値観を守るためにはリスクをいとわないという意志を、プーチン大統領に示すことが最も重要なのではないだろうか。
*筆者は英王立国際問題研究所(チャタム・ハウス)所長。(ロイター)
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コメント
モルドバも不安定。ポロシェンコ大統領も
意外と煮え切らない。むしろ欧米の狙い・・
”ベラルーシのEU入り”に、あるのでは?
ルカシェンコ大統領は.胸を張って上機嫌。
メルケルさんの精力的な動きも、ウクライナ
よりもベラルーシ(白ロシア)経済力も小さく
軍事的な重要性もウクライナ対比では軽い。
バルト海も黒海も、出口が狭く、戦略的な
重要性は、欧米にとって大して変らない・・
じわじわと、綿でロシアの首を絞めて行く?
ポーランドや既にEU入りしたバルト3国に
とっても、「ベラルーシの方が有難い」。
ソビエト連邦は.結局キューバを見放した。
プーチン氏無しでは冷戦は.崩壊しなかった。
レーニン、スターリンの料理長.お祖父さん。
その教えは.潜在意識の奥深く生きている。
彼の現在意識は如何に?・・だが、決着は。
既に着いているのではない?急げば危ない!
ロシアは、分裂するかも?・・
EUはギリシャを離脱させる仕組みを持ってはいない。
にも拘らず、チプラス首相は、ドイツが認めようとも
しない財政上の緩和を求めバルファスキ財務相も中々
強硬でありながら余裕があるようにも見える。・・
そしていざとなったら、ギリシャの通貨ドラクマを
復活し、トルコではなく、ロシアを当てにするような
ことを平気でいっている。仏ノーベル経済賞学者トマ
ピケティー氏は.存外ギリシャの立場を支持し同情的。
合理性からだけならギリシャが不条理とも断定はでき
ないが、グリーンスパン元FRB議長が.ギリシャ離脱を
勧めるものだから、結構現実性があるように思えたり
する。ユーロ圏の最大の受益者はドイツだから相当の
努力をしてきた、ギリシャの考えが受け入れられても
よいかもしれぬ等と考えてしまう。
バルファスキ財務相はオーストラリアとの2重国籍。
国際関係上の複雑な思惑と経済財政上の合理性を調和
させる戦略?カスピ海南岸にはイラン、黒海沿岸には
トルコ地中海にはギリシャとレバノンキプロスがある。
トルコとレバノンだけでなく、シリアも地中海岸・・
それがISILで、難しくなっているし、イスラエルは
だからといってアサド政権が倒れたらよりややこしく
なると考え、トルコも空爆基地を有志国連合に貸そう
とはしていない。ロシアもアサド政権を倒して、誰が
安定を取り戻すのか?と訊くと、欧米諸国は無言。
結局、黒海は、出口がバルト海よりも狭く、イラン
やトルコが最早ロシア寄りとは断言できBぬロウハ二
&エルドーアン、ロシアをここで締め付けるのは愚作
出口をロシアの為に残しておく方が得策だという暗黙
の了解があるのではないか?
イラクのサダム.フセイン大統領もリビアのカダフィ
大佐も、イランのアフマデ.ネジャド大統領も.いなく
なり、エジプトは、アラブの春頓挫シシ大統領が実権
を握った。サウジ・イスラエル・エジプトは、一時は
米国を当てにせず、ロシアを当てにする戦略に傾きか
けた。
それがクリミヤ半島だけでなくドネツク.ルガンスク
両州をはじめとするウクライナ東部やモルドバの東部
ドニエストル川流域を伺うとなると、ユーラシア同盟
結束を画策するロシアに対する警戒感が周辺で高まる。
この事、欧米にとっては、ある意味好都合なのでは
ないかとも思えてならない。ロシアにとって北の出口
は、フィンランド湾~バルト海~北海だけではない。
白海、コラ半島スカンジナビア半島の北バレンツ海
やオビ湾、エニセイ川の出口にヤマル半島やカラ海。
ムルマンスクは”コラ半島の北岸不凍港”、白海には
アルハンゲリスク港。
バルト海への出口、サンクトペテルブルグ1400年代
まではスエーデン領だったし、ムルマンスクもフィン
ランドやナチスドイツとの争奪攻防戦は、凄まじい。
砕氷船で年中港を使えるようになり、北極海航路の
可能性が現実のものとなった今、バルト海を塞ぐ戦略
は無いとは思うものの、黒海で揉めるよりは、現実的。
”素人の妄想一人旅”と言われれば、それまでだが
ユーラシア同盟忠実な一員だと思われるベラルーシが
本音でロシア傘下にいる事と、EU入りがもし可能なら
どちらを望むかといったら、経済制裁が続く限り協働
してもキューバのように貧しい忠実よりは豊かで自由
なEU入りの方が良いと考える可能性は低くない。
キューバが年内に米国と統合する事さえあり得ない
事ではない、今までベラルーシが大人し過ぎるほどだ
ったのは”冷戦崩壊大地震の大鯰プーチン”とはいえ
あり得ないと観念するしかないと.認識していたから。
あり得ると考えるなら、話はまったく違ってくる。