■対中国・北朝鮮、前のめりの危うさ
【ソウル=藤本欣也】韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領が就任してから25日で2年となる。閉鎖的な統治スタイルや不況、大事故を受けて記録的な低支持率にあえぐ中、8月には任期5年の折り返し点を迎える。
来年4月に総選挙を控えるだけに今後、支持率回復を図ろうと対中国、対北朝鮮外交で前のめりになる危険もはらむ。
■餅買い談笑のパフォーマンス
旧正月(19日)前の10日、ソウルの市場に朴大統領の姿があった。自ら財布を取り出し、餅などを買って店員と談笑した。大統領府にこもり、一部側近を重用して政策を遂行するという閉鎖的なイメージから脱し、庶民性を訴えるパフォーマンスの一環だ。背景には支持率の低迷がある。
韓国ギャラップ社の世論調査によると、支持率は就任後初の訪米、訪中などを成功させた2013年の9月に67%を記録。
しかし景気回復が進まない中で下降線をたどり、昨年4月のセウォル号沈没事故以降は政府対応の不手際を非難されて40%台に。さらに昨年11月末以降の元側近による国政介入疑惑などから一時、29%まで落ち込んだ。過去の政権と比べても最低水準の支持率にあえいでいる。
ただ世論調査をみると、これといった実績のない朴政権にあって、外交政策への評価は低くない。
特に、習近平国家主席との6回に及ぶ首脳会談を通じてもたらされた対中関係の緊密化が、韓国を訪れる中国人観光客の増加と相まって好感されている。昨年11月の首脳会談では中韓自由貿易協定(FTA)で実質合意し年内にも発効の見通しだ。
一方、北朝鮮との関係では昨年2月、3年ぶりとなる南北離散家族再会事業の実施にこぎ着けたものの、後が続かない。韓国は旧正月の事業再開を呼びかけたが北朝鮮は応じなかった。
■対独戦勝式典に出席するか否か
こうした中、5月のモスクワでの対ドイツ戦勝70周年記念式典に北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)第1書記が参加を予定していることから、南北関係改善に向けて朴大統領も出席すべきだとの声が韓国で上がっている。
しかしウクライナ問題の影響で、同盟国・米国のオバマ大統領は訪露しない見通しで、米国と足並みをそろえなくていいのかという議論もある。
2人きりで首脳会談を行っていない日本との間には、産経新聞の加藤達也前ソウル支局長の在宅起訴で批判を浴びるなど問題が山積。「首脳会談があるとしても、安倍晋三首相が8月に発表する戦後70年談話を見定めてからになる」(外交筋)との見方が多い。
最新の世論調査では、首相交代などが奏功し、朴大統領の支持率は30%台を回復した。ただし、朴政権が支持率アップのために対中・対北外交で成果を出そうと躍起になった場合、日米韓の安保体制に微妙な影響を及ぼす可能性がある。(産経)
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