18527 ティクリート作戦にイラン軍司令官    古沢襄

ティクリート奪還作戦には欧米メデイアも戸惑いがあるのではないか。

四日深夜、時差の関係で海外情報が飛び込んでくるが、中東に強いAFP、ロイターなどは沈黙を守っている。いま、テレビで放映されているイラク軍・砲兵部隊の砲撃情景はイラク軍の提供によるものだろう。同じ画面を何度も繰り返している。

深夜の非公式情報では①ティクリート奪還作戦にイラン軍司令官が参加して指揮をとっている②過激派ISが反撃に転じて奪還された二地区を逆占領した・・など情報が錯綜している。

米ブルームバーグはファルス通信がイラン国軍のエリート部隊「クッズフォース」の指揮官が2日前に現地入りしたと伝えている。

■イラク、ティクリート奪還作戦を開始-イラン軍指揮官が支援

(米ブルームバーグ)イラク軍は2万7000人規模の部隊を配備し、過激派組織「イスラム国」からティクリートを奪還する作戦を展開している。

イラク政府系テレビ局のイラキーヤの報道によると、通常シーア派の武装勢力を意味する「準軍事的組織」が参加している。

一方、ファルス通信はイラン国軍のエリート部隊、クッズフォースの指揮官が2日前に現地入りし、イラク軍の野戦司令官らに「状況分析と助言」を与えたと報じた。

イスラム国は昨年6月にイラク北部最大の都市であるモスルを掌握し、そのすぐ後にティクリートを陥落させた。8月には米国がイラク軍とクルド人勢力を支援する目的で、イスラム国に対する空爆を開始した。 (Iraq Starts Attack on Tikrit With Help of Iran Commander)

その一方で、アメリカはティクリート奪還作戦に懐疑的な態度がみえる。批判的ともいって良い。

■【ワシントン時事】米国防総省のウォレン報道部長は2日、イラク軍が開始した北部の要衝ティクリート奪還作戦について、米軍は空爆による支援を行っていないと述べた。

報道部長は「イラク側から要請がなかった」と記者団に理由を説明。ただ、事前にイラク側から作戦に関し通知は受けたという。

米中央軍当局者は先月、イラク軍が今年4~5月にも過激派組織「イスラム国」に占拠された北部モスルの奪還作戦に着手するとの見通しを表明。

イラク当局者は、作戦内容を公にしたとして、不快感を示していた。(時事)

■ティクリート=チグリス川沿い、バグダードの北西140kmの位置にあるイラクの都市。スンニー・トライアングルの一角をなす。人口約25万人。

ティクリートは米・イラク軍が奪回を目指すモスルとイラク首都バグダードのほぼ中間。モスル攻略に欠かせない都市だが、作戦計画をめぐって米中央軍とアバディ政権の間には不協和音が漏れてくる。

ここはイラク元大統領サッダーム・フセインの出生地であることで、フセイン政権時代には有力政治家や高級官僚・高級軍人の多くがティクリート出身者から抜擢され、市内には大統領宮殿やモスク等の施設も建設された。市民はスンニ派。

現地からの報道によると、作戦部隊は首都北方のサマラから北進し空爆(米軍は空爆に参加せず)や砲撃を加えながらティクリート近郊で攻勢を掛けている。イスラム教シーア派の民兵も参加し、AFP通信は部隊の規模を約3万人と伝えた。

ティクリートの攻防戦は、アバディ政権が目指すモスル奪還の時期を左右する。米中央軍当局者は2月、イラク軍とクルド自治政府の治安部隊によるモスル奪還作戦を4~5月にも始める見通しを明らかにした。

一方、イラクのオベイディ国防相は「時期を明かすべきではない」として米中央軍の作戦予告に不快感を示していた。  

モスルやティクリートの攻略作戦で、必要なのはスンニ派の過激派組織ISに市街戦をさせないで、郊外で捕捉・殲滅することであろう。市街戦になるとスンニ派市民に甚大な被害を与え、国際世論の非難を浴びかねない。

米中央軍が空爆に慎重な点もそこにある。派手な砲撃をやってしまうと、過激派組織ISが市街地に撤退するおそれがある。イラク軍は米中央軍の懸念にはおかまいなしに大規模作戦を開始して、おまけにイラン国軍のエリート部隊「クッズフォース」の指揮官が現地入りしたから穏やかでない。さてどうなるか。

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