ロシアのプーチン大統領は、去年、ウクライナ南部のクリミアを併合する過程で、情勢が不利になった場合に備えて、核兵器使用に向けた準備を指示していたことを明らかにし、国際社会からの反発が予想されます。
ロシア国営テレビは15日、ロシアがウクライナ南部のクリミアを併合してまもなく1年になるのに合わせて特別番組を放送しました。
このなかでプーチン大統領は、クリミアを併合する過程で核兵器使用に向けた準備ができていたかどうか質問されたのに対し、「準備はできていた。クリミアは歴史的にわれわれの領土だ」と答え、情勢が不利になった場合に備えてロシア軍に準備を進めるよう指示していたことを明らかにしました。
クリミアを巡って、核大国のロシアが核兵器の使用を視野に準備していたことが明らかになったのは初めてで、国際社会からの反発が予想されます。
さらにプーチン大統領は、クリミアの併合を決めたのはウクライナの政変の直後で、クリミアに駐留するウクライナ軍を武装解除させるため、「軍の参謀本部の特殊部隊や海兵隊を派遣していた」と述べました。
プーチン大統領はこれまで、「住民投票の結果を受けて編入を決めた」としてきましたが、この説明を事実上覆し、軍事力も利用してロシアに併合する方針だったことを認めました。
プーチン大統領はクリミアの併合を歴史的な偉業と位置づけており、みずから決断したとアピールすることで、強い指導者を印象づけるねらいもあるとみられます。
■ウクライナ 国際司法裁判所に提訴か
クリミア併合を巡るロシア国営テレビの特別番組について、ウクライナのヤツェニューク首相は、予告編の放送を受けて11日に「誰が、ウクライナの領土を占領するように命令して、国際法に違反したのか、その問いに答えている」と述べました。
そのうえで、ロシアによるクリミア占領の証拠だとして、オランダのハーグにある国際司法裁判所に提訴する構えを示すなど、強く反発しています。
■被団協「強い憤り覚える」
日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会の田中煕巳事務局長は、「戦後70年間訴えてきた被爆者の怒りや悲しみに加え、核兵器による被害の実態を無視した発言で、強い憤りを覚える」と話しています。
そのうえで、「来月には国連でNPT=核拡散防止条約の再検討会議が開かれるが、今回のプーチン大統領の発言をきっかけにロシアが必要以上に国際社会との対立を深めれば、核兵器廃絶に向けた議論が停滞してしまうのではないかと懸念している」と話しています。
また、菅官房長官は午前の記者会見で「わが国は一貫して『力を背景とした現状変更の試みは断じて認められない』という強い立場を取っている。すべての当事者が、ウクライナ問題の平和的、外交的解決に向けて建設的な努力をすることを期待したい」と述べました。(NHK)
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