■3つの懸念、答えぬ中国
ADBが中国の主導するAIIBとの協力関係を模索する背景には、ADBが採用する「国際基準」を、AIIBの組織運営などにも適用させる狙いがある。ただ、謎多き国際機関への警戒は根強い。中国の巨大な影響力→甘い審査→乱開発という「3つの懸念」に対し、中国側はいぜん不安解消に動く気配はない。(尾崎良樹)
■巨大すぎる影響力
AIIBで、最大出資国の中国が大きな議決権を確保し、意思決定で有利に立つのは間違いない。
ADBは融資案件に対し、理事会が最終的な承認判断をしており、出資比率の高い国による恣意的な判断がなされないよう、議決権を調整している。出資が多い国の議決権を減らし、出資割合が低い途上国に多く割り当てる仕組みだ。
だが、中国が5割近く出資するとみられるAIIBは、理事会の有無も不透明なままだ。大和総研の斎藤尚登シニアエコノミストは「早い段階できちんと説明しなければならない」と指摘する。
■不透明な融資基準
さらに不安視されているのが、融資審査における基準の不透明さだ。ADBや世界銀行など既存の国際金融機関は、融資の際に「返済が滞りなく行われるのか担当部署が厳しく審査している」(ADB駐日代表事務所)といい、担当者も定期的に研修を受ける体制をとっている。
だが、AIIBが厳格な審査体制を構築し、担当者を雇用・育成できるかは不明だ。融資の判断も中国が独自基準を採用する恐れが強いとみられている。
第一生命経済研究所の西浜徹主任エコノミストは「もし、借り入れ国の返済が不可能になった場合、既存機関との返済順位をどうするかが問題になる」と警鐘を鳴らす。
■見えない環境配慮
低利・迅速さを前面に、十分な審査がなされない融資が増えれば、環境破壊につながる乱開発が進む懸念もある。ADBは道路の新設などの投資案件が環境に与える影響を事前に調査するほか、人々の暮らしへの影響も外部の識者がチェックしている。
ADBの中尾武彦総裁も「環境保護への配慮が必要になる」と中国側にくぎを刺した。だが、中国の楼継偉財政相は「官僚主義で最良とはいえない」と反論した。斎藤氏は「公正・公平な制度を担保し、透明性のある情報開示を行うことができるのか」と疑問視している。(産経)
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