中国の習近平国家主席は権力集中を進める中で、共産党中央軍事委員会内に国防・軍隊改革深化領導小組(指導グループ)を設置して組長にも就くなど軍事改革の主導権を握ってきた。
同領導小組は前回(17日付本紙)詳述した中央国家安全委員会のような非軍事を含む広範なものとは異なり、改革も人民解放軍内部の近代化などが主体になろうが詳細はなお不透明である。
しかし、この領導小組に関して、役割や任務は2013年の党第18期中央委員会第3回総会(3中総会)の改革決議第15項の「国防と軍隊改革の深化」に見ることができる。
そこでは「軍隊の体制・編成、中央軍事委と総部指導機関の職能配置、統合作戦訓練と後方支援体制、新型作戦部隊の情報化建設」など改革対象が多数列記されていた。
この多岐にわたる改革を、同領導小組の常務副組長に抜擢(ばってき)された許其亮中央軍事委副主席・空軍上将は対象を3つであると要約している。
それは、(1)中央軍事委と4総部の統合運用体制、各軍種間の比率や海軍、空軍、第2砲兵の重点強化(2)軍隊政策面での将校のプロフェッショナル化、兵役制度改革、退役軍人の再就職制度改革(3)国防体制面での軍民協力、軍事人材確保、国防教育、国防動員体制のメカニズム改革-である。
総じてみると、この軍事改革の構想は陸軍の兵力削減を含む軍区の再編から後方部門の管理にまで及ぶ大規模なものだが、なお理念的な段階のものが多い。それでも同領導小組第1回会議で習組長は「中国防衛の金城鉄壁を築け」と訓示し、「勝てる軍隊の建設が改革の焦点だ」と改革の方向を示唆した。
それらは、(1)統合作戦が遂行できるよう統合司令部の構築(2)陸軍中心から海空軍重視の統合軍の編成(3)第18回党大会の政治報告での「三段階国防発展戦略の追求」による軍隊組織や兵器装備の近代化(4)「軍種の転換」により、まず陸軍は情報主導で兵員数重視から少数精鋭化に改革、空軍は「天空一体・攻防兼備化」を図り、新兵器の開発・生産で早期警戒監視能力や空中攻撃能力を強化、さらに海軍は遠海機動作戦能力や戦略抑止・反撃能力を強化する-などとしている。そして空母の実戦化や晋級原子力潜水艦の増強などが強調されている。
見てきたように習政権の軍事改革は広範で、その実効化はこれからである。今後の推進動向が注目される。(産経 拓殖大学名誉教授・茅原郁生)
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