18818 イラン制裁解除ならビッグチャンス    古沢襄

■外資が参入に意欲

[ドバイ 3日 ロイター]イランは国際銀行システムから締め出され、長年にわたる制裁で外国との貿易も急減、経済は疲弊している。核問題をめぐる最終合意が成立し、米国や欧州連合(EU)による制裁が解除されれば、イランの国内企業のほか、外国企業にとっても大きなビジネスチャンスが生まれる。
 

制裁が解除されれば、イランは1990年代初頭の東欧以来で、世界経済に再参加する最大の経済となる見通し。ペルシャ湾岸の経済はこれまで、サウジアラビアなど豊かな石油輸出国がけん引してきたが、イランの参入により域内の経済バランスが大きく変わる可能性がある。
 

ロンドンのコンサルタント会社、ベータマトリックスのイラン生まれのエコノミスト、メヘルダッド・エマディ氏は、石油や自動車などの分野では「イランと西側の一部大口投資家との間でもう交渉が始まっている」と指摘。「交渉は今後、一段と加速するだろう」と話している。
 

エマディ氏は、核問題の最終合意が締結された後の1年間で、イラン経済の年間成長率は最大で2%ポイント拡大し、5%を上回る可能性がある、との見方を示した。成長率はその後の1年半にさらに加速して7─8%に達し、急成長時代のアジア新興国と一致する、という。
 

エマディ氏によると、昨年は76億ユーロ(83億ドル)だったイランとEUの貿易は、2018年半ばまでに400%増加する見通し。
 

<制裁の完全解除には時間>
 

米国とEU、国連による制裁は、金融、運輸、エネルギー、ハイテクと複雑に絡み合っているため、最終合意が成立したとしても、制裁が完全に解除されるまでにはまだ何年もかかると見られている。
 

従って、イランの石油輸出が拡大に転じるのは、2016年以降になる公算が大きい。イランの石油輸出は2012年には日量250万バレルだったが、現在では同110万バレル程度にまで落ち込んでいる。 

ただアナリストは、イラン経済にとって最も大きな打撃となっている制裁に関しては、オバマ米政権によって早急に解除される可能性がある、としている。その制裁とは、米政府が米国愛国者法第311条に基づいて、イランを「マネーロンダリング国」に指定しているものだ。
 

もしこれが解除された場合には、外国の銀行は米国による報復を恐れることなくイランと取引を行うことができるため、通商や投資に及ぼす影響は大きい。イランは2012年に、国際銀行間通信システム「SWIFT」から追放されたが、エマディ氏によると、核問題の最終合意後3カ月以内にも、イランは再加入が認められる可能性があるという。
 

対イラン制裁解除に伴う恩恵は、湾岸諸国全域に広がると見られる。なかでも、伝統的にイランとのビジネスのハブの役割を果たしており、大規模なイラン人コミュニティーを抱えるドバイの恩恵は大きい。
 

長年にわたる制裁の影響により、ドバイのイランとの貿易は、3分の1以上も減少している。制裁が解除された場合には、ドバイはイランへの再参入を目指す外国企業にとって、中継地点になる可能性がある。
 

湾岸企業のなかでは、航空会社やロジスティック企業がイランとのビジネスに高い関心を示している。クウェート市場に上場しているロジスティック大手、アジリティのタレク・サルタン最高経営責任者(CEO)は、昨年末にロイターに対して「国際的な問題が解決され、制裁が解除されれば、われわれは参入第1弾になるだろう」と述べていた。同CEOの希望も、もはや夢物語ではないのかもしれない。(ロイター)

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