18825 書評「国際情勢判断半世紀」    宮崎正広

■外交方針、戦略に警告を発し続けた岡崎久彦氏の遺言集

日本の戦略不在がこれからの安全保障に何をもたらすのか

<岡崎久彦「国際情勢判断半世紀」(育鵬社)>

本書は昨秋亡くなった岡崎久彦元サウジアラビア大使(外交評論家)の遺稿集とも言える書籍で安倍晋三首相の追悼文が巻頭を飾っている。

歴代政権の外交のご意見番でもあったが、外交シンクタンク岡崎研究所を十年以上、主宰された。

余生は国際情勢の分析にかけると言われ、おりおりに録音したテープをおこして新しく編纂されたのが本書である。

ときおりのシンポジウムの他、年に二回ほど開催されたパーティ(飲み会)では冒頭に三十分ほど岡崎氏が情勢分析をされ、その講話が済んで、乾杯がおわるや会場を去る人も多かった。

どういう分析をされるか、それだけを外務省、防衛庁関係者、商社マンらが聞きに来るのだ。

重要部分はいくつかあるが、中国の軍事力の脅威について「技術の進歩」をとりわけ問題視されている箇所が目を引いた。

まだまだ軍事力は米国優位といわれるが、日米同盟に安穏としている日本への警鐘でもある。

中国が「長距離ミサイルの性能を向上させて、GPSを使って、西太平洋の米空母機動部隊を宇宙からピンポイント攻撃できるようになれば、状況は一挙に変わる。いずれにしても技術革新将来を正確に見通すことは困難であり、いつそうなるかわからない」

だから米国は中国に強硬な姿勢をとらなくなったのだ。

となれば、「2016年の台湾総統選挙において、1996年のような米機動部隊の威圧が可能かどうか、もうわからなくなっている」という具体的状況がすでに出現している。

いそぐべきは日本の外交戦略、軍事戦略の立案であると岡崎氏は遺言された。

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