■存在感増す二階氏「ポスト安倍」仕込み?
安倍晋三政権のもと「政高党低」が続く自民党にあって、二階俊博総務会長の存在感が増している。
9月の党総裁選をめぐり安倍首相の無投票再選支持をいち早く表明し、流れをつくった。首相も豊富な経験と人脈を駆使して根回しする二階氏に信頼を寄せ、党内には二階氏を「陰の幹事長」と称する向きもある。
ただ守旧派の代表格として、首相とは政治信条などで「水と油」のはず。首相側近らは警戒を緩めていない。
■「ポスト安倍」布石
「これまでの日米首脳会談に比べて大きく前進した。首相は世界中を飛び歩き、自ら外交をしている。米国もそれを知っている。だから傾聴に値するという感じの会談になる。評価が高い」
二階氏は30日、二階派の研修で訪れていた和歌山県の高野山で、記者団を前に首相を絶賛した。
4月15日には次期党総裁選についてこう語り、早々と安倍首相への「恭順」姿勢を示している。
「首相は国民の期待に応えて頑張っておられる。これで十分だ。他に出たい人がいたら拒まないが、いたずらに騒ぎを起こして、面白がったというだけでは済まない」
首相への批判を強める古賀誠元幹事長が対抗馬擁立を模索し、党内では古賀氏と近い二階氏が連動する可能性もささやかれていた。二階氏はあっさり打ち消してみせたのだ。
二階氏は「数の論理」を重視する政党政治家らしい一面も見せる。
5月下旬に中国を訪問するが、石原派会長の石原伸晃前環境相に同行を打診した。党内では「二階派、石原派合流の布石か」との観測が一気に広がった。石原派からは5人が参加予定だったが、あまりの騒ぎの広がりに5人は中国行きを諦めたほどだ。
二階派(34人)と石原派(14人)が合流すれば、麻生派(37人)だけでなく岸田派(45人)も抜いて党内第3派閥となる。
合流話は石原派最高顧問の山崎拓元党副総裁が主導しており、二階氏も「そういう提案を受けた」と認めている。
ただ、山崎氏は石原氏を総裁候補と想定しているだけに、二階派内には反発が強い。
二階氏は「石原さんがどんな動きをしているかは聞いたことがない。われわれが本気で動くときは、そんな数ではない」とけむに巻くが、官邸周辺は「『ポスト安倍』を視野に次の手を仕込んでいる」と警戒を強めている。
■頼りすぎると…
政治課題に対し正面突破を図ることの多い安倍首相に対し、国会対策畑が長い二階氏は妥協点を探る手法にたけている。
二階氏は親韓国、親中国といわれ、首相とは距離があるが、首相も信頼を寄せている。
「そちらの雰囲気はどうですか」。昨年11月、外遊中の安倍首相は二階氏の携帯電話を鳴らし、こう尋ねた。
首相が年末の衆院解散・総選挙を表明する直前のこと。衆院解散の決意を感じ取った二階氏は記者会見で「解散風が吹いていることは間違いない」などと言及。首相の帰国時には、解散表明の環境がすっかり整うことになった。
首相側近は「相手の望む結果を出す仕事師といわれる二階氏の真骨頂。首相は信頼を強くした」と語る。実際、首相は2月に訪韓した二階氏に朴槿恵大統領あての親書を託した。今度の訪中も「成功させてほしい」とエールを送る。
二階氏は新進党時代に行動をともにした公明党とのパイプが太く、漆原良夫中央幹事会会長とは定期的に意見交換している。「俺がいる間は自民党、公明党が別れることはさせない」が口癖だ。閣僚を歴任し、官僚や財界にも知己が多い。
「二階氏は足して2で割る手法は天才的だ。ただ頼りすぎると、あらゆることが骨抜きにされる。まさにもろ刃の剣だ」
自民党幹部は警戒を解くことはない。(産経)
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