19048 リビア難民の大量流入 ギリシャ財政破綻   古沢襄

■合意見えないギリシャ協議、破綻見越した責任押し付け合い

欧州は北アフリカ・リビア難民の大量流入、財政破綻寸前のギリシャ支援と見通しがつかない二重苦に直面している。

ロイターによれば、ギリシャの左派政権は既にドイツをやり玉に挙げ、緊縮政策を押し付けて「人道上の危機」をもたらしたと攻撃する始末。

ギリシャの新政権は第2次世界大戦中にナチス・ドイツがギリシャを占領したことの補償をあらためて要求した。ギリシャ政府が算定したその金額は2790億ユーロ(3035億ドル)。

だが、ドイツのメルケル首相は努めて友好的な姿勢を示しているものの、ナチスの犠牲者に対しては補償済みであり、戦争犯罪に対する請求権は1990年のドイツ統一の際の旧連合国主力4カ国との協定で消滅したと応じる気配はない。

ブリュッセルでのギリシャと国際債権団の協議は、合意が成立する見通しが立たず、ギリシャが財政破綻したら責任を相手に押し付けようと非難合戦に転嫁しようとしている。

■[ブリュッセル 26日 ロイター]ギリシャと国際債権団の協議は、同国が改革を実行する見返りに支援資金を受け取るという点で合意が成立する見通しが立たず、財政破綻までの距離がさらに近くなってきた。

 
こうした中で今までチキンゲームを繰り広げていたギリシャと債権団は、今度はいざ破綻した場合の責任を相手に押し付けようと非難合戦を展開している。
 

欧州各国の首脳、欧州中央銀行(ECB)関係者、ギリシャの政治家が足並みをそろえているのは、ギリシャが破綻し、デフォルト(債務不履行)が起きたとしても、自分たちがその元凶とされるのは御免だという姿勢だけだといえる。
 

ギリシャの左派政権は既にドイツをやり玉に挙げ、緊縮政策を押し付けて「人道上の危機」をもたらしたと攻撃している。
 

一方でユーロ圏諸国は、チプラス首相が率いるギリシャの新政権が交渉で脅迫的な言い回しや妨害行為をしたり、約束を守らなかったり、財政が火の車なのに厳しい選択を回避したと、とがめる構えだ。
 

ドイツや欧州連合(EU)、国際通貨基金(IMF)の当局者からは「われわれはギリシャを救うためにできることは何でもやっているが、結局はギリシャ自身の問題だ」というメッセージが聞こえてきている。

 
チプラス首相とバルファキス財務相は当初、ドイツに対抗する仲間を探そうとしてフランスやイタリア、英国、EUを歴訪し、各メディアの取材に応じたものの、メディア以外で味方になってくれる相手は見つからなかった。

 
さらにチプラス氏は、第2次世界大戦中にナチス・ドイツがギリシャを占領したことの補償をあらためて要求した。ギリシャ政府が算定したその金額は2790億ユーロ(3035億ドル)と、ユーロ圏とIMFの今回の支援額である2400億ユーロを上回る。

これについてドイツは、ナチスの犠牲者に対しては補償済みであり、戦争犯罪に対する請求権は1990年のドイツ統一の際の旧連合国主力4カ国との協定で消滅したとの立場を取る。

 
ドイツのメルケル首相は努めて友好的な姿勢を示し、チプラス氏との信頼関係を築こうとしながらも、ギリシャは債権団が設定した年金の大幅削減などの改革条件は達成が必要だと主張している。

 
メルケル氏は先のチプラス氏との会談後に、ギリシャの財政資金枯渇を「阻止するためにあらゆることがなされなければならない」と語った。その上で「ドイツ側は求められた支援をすべて提供する用意はあるが、もちろん改革が実行されなければならない」と付け加えた。

 
投資家はこのメルケル氏の発言を2012年にECBのドラギ総裁がユーロ防衛のためにあらゆる手段を講じると約束したことになぞらえ、一時は局面好転につながるかもしれないと期待を寄せた。

 
だがメルケル氏の発言は、この先見込まれる非難に予防線を張ったものとも解釈できる。ドラギ総裁と違って、ギリシャの破綻を食い止めるために何でもやるべき「主体」には言及していない。

 
ドイツのショイブレ財務相に至っては、ギリシャがユーロ圏離脱を回避できるかどうかは疑わしいと公然と表明している。

 
24日に開かれたユーロ圏財務相会合は、ギリシャが要請していた支援金の一部早期支払いを拒否し、同国が完全な改革を実施するまでは長期支援や債務減免に応じないと表明した。

 
ギリシャの指導者たちは、同国の民意に耳を傾けて尊重するべきだと主張。債権団は、こちらも自国の有権者からの負託を受けていると反論している。

バルファキス氏によれば、ユーロ圏諸国が支援資金を提供しなかったのは、まずはギリシャを救うよりもそれぞれの国の銀行を守ろうとしたためだ。

しかしユーロ圏諸国の当局者はそうした見方はまったく的外れだと指摘する。これらの銀行は12年にギリシャが民間の債権者に対して実施した債務再編で損失を被ったからだ。
 

バルファキス氏は非難の矛先をECBにも向けて、ECBはギリシャの銀行の流動性を枯渇させ、政府への短期貸付を大きく絞り込むことで同国を「窒息させつつある」と述べた。
 

これに憤慨したのはECBのドラギ総裁で、欧州議会における証言でECBのギリシャ向け支援額は1100億ユーロ前後に上ると説明している。
 

ギリシャ当局者はここ何週間にもわたって、ユーロ圏諸国に対して資金が底をついたと言い続けてきた挙句に、次の債務返済に充てる財源を見つけ出した。

このため、あるEUの交渉担当者は「ギリシャはあまりに頻繁に『狼が来る(資金が枯渇する)』と叫んできたので、実際に破綻してもだれも信じないだろう」と突き放した。
 

EU欧州委員会のユンケル委員長は、チプラス氏が手遅れになる前に痛みを伴う改革を受け入れることで与党内をまとめると期待し、ぎりぎりまでギリシャをつなぎとめておきたい意向だ。
 

ユンケル氏にとっては、ユーロ圏の国際的立場からはギリシャの離脱は手痛い打撃であり、これが悪しき前例となって将来の危機において他の加盟国も離脱するのではないかとの思惑を投資家に持たせかねない。
 

ギリシャがたとえユーロ圏にとどまっても、他の加盟国やECBに対するデフォルトが発生すれば、EUの歴史上最悪のイベントの1つになるだろう。(ロイター)

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