19103 中露首脳会談 身勝手な「歴史」反論せよ   古沢襄

力による現状変更への非難や警戒を国際社会から集めていながら、改めるどころか、開き直っている。

モスクワで開かれた中露首脳会談の印象だ。

習近平国家主席とプーチン大統領は戦勝国の立場を強調し、過去の歴史をめぐり日本を牽制(けんせい)する姿勢を打ち出した。

一方、東シナ海、南シナ海での国際ルールを無視した中国の海洋進出、ロシアによるウクライナへの軍事介入が改まる気配はみられなかった。

自由や法の支配といった普遍的価値の実践を、いかに中露に受け入れさせるか。日米や他の先進国には、結束の必要性を再認識する日になったといえよう。

先進7カ国(G7)の首脳は、軒並み戦勝70周年式典を欠席し、出席したのは中露の友好国など約20カ国にとどまった。10年前の同じ式典には、日米を含む倍以上の国から首脳が参加した。

そのこと自体、ウクライナ問題がロシアの国際的地位の凋落(ちょうらく)を招き、中露が国際秩序を乱す重大な懸念をもたらす存在であることを浮き彫りにした。プーチン氏にとっては、習氏の出席と首脳会談の意味は大きかっただろう。

会談では「ファシズムや軍国主義に対して共闘した」ことを確認し、戦略的互恵関係を深化させるなどの共同声明に署名した。

第二次大戦を戦った友誼(ゆうぎ)を確認したいなら、そうすればよい。だが、今日に至るまでに自らがとった、正義と相反する行動には頬かぶりし、一方的に日本を対象にして「歴史の歪曲(わいきょく)」を批判する問題のすり替えは容認できない。

とくに、習氏は南京事件で「30万人の同胞が痛ましく殺戮(さつりく)された」と昨年から主張している。日本側の調査や研究から、現実にはありえないことだ。今夏に戦後70年談話の発表を控える安倍晋三首相を牽制し、反論を封じようという中国の意図は明白である。

先の大戦の終結前後に、旧ソ連は中立条約を破棄して対日参戦し、北方領土を武力で不法占拠した。プーチン政権はこの事実に向き合わず、「戦勝」を盾に4島の実効支配を続けている。

9月には中国での「抗日戦争勝利記念日」で中露が再び連携する可能性が高い。安倍首相は新たな日米同盟関係を背景に、国際秩序の担い手にふさわしい日本の立場を訴えてほしい。(産経・主張)

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