19124 BRICS銀行の行く手にも暗雲   宮崎正広

■ブラジル不況、ロシア不景気につぎ南アの暴動収拾できず

BRICSの「s」は南アである。

人口五千万、アフリカ55ヶ国のなかでは最大のGDPを誇り、(白人政権の頃は、全アフリカの三分の一が南アだった)、雇用、ビジネス・チャンスを求めて周辺国から移民が集中していた。

嘗ての南アは戦略物資、レアメタル、とりわけ金鉱は世界一。プラチナ、マンガン、ダイアモンドでも輝ける生産国として、経済成長が続いた。

このため、隣国のジンバブエ、ボツワナばかりか、遠くマラウィ、ブルンジ、ソマリア、ナイジェリアなどからも一攫千金を狙う投資家や、雇用のありつこうとする労働者が南アに流入し、小工場や商店を経営してきた。

しかし白人が去り、経済政策が頓挫し始めると好景気に沸いた南アも不況入りし、失業率が25%以上となった。

当然、失業した人々は外国人移民を恨むようになる。外国人排斥運動がおこる。

3月以来、こうした移民の商店を襲撃、放火、略奪事件が頻発し、四月には大規模な暴動がケープタウンからヨハネスブルグまで飛び火、死者6名をだすにおよび、外国人8000名余が、南アから緊急に脱出した。

その後も治安が悪く、外国資本の工場を閉鎖して外国企業の撤退が開始された。

嘗て南アに進出していたのは台湾系華僑や印度系が多かったが、この二十年で様変わり、台湾系は減少し、替わりに夥しく入り込んだのは中国大陸からの移民だった。

いまでは三万人以上の華僑、華人が南アでビジネスを展開している。このため都市部では中国人襲撃事件が頻発、これまでにも数名が殺害されている。

さて外国資本の逃避がつづく南アは中国が主導するBRICS銀行のメンバーである。二日前にインド人の総裁が決まり、習近平はモスクワ訪問の際に最初のプロジェクトにも署名したが、まだBRICS銀行は資本金の払い込みも終わっていない。

ロシア、ブラジルそして南アの不況入りで、AIIB同様に、BRICS銀行も行く手には、暗雲、というより黒い雲の嵐の前兆が広がっている。

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